きっかけは「たった数日、預けてもいいのか」という葛藤から
「母を2泊3日、預けてもいいのでしょうか……?」
退院支援のカンファレンスで、そうつぶやいたご家族の声に、私はハッとしました。
その声は、不安というより“罪悪感”に近いものでした。まるで、「預けるなんて、自分が楽をしたいだけ」と思われるのではないかと気にしているようで……。
でも、そうではありません。
この記事では、ショートステイの基本とその使い方、そして現場で出会ったご家族のリアルな声をもとに、「預ける=悪」ではないことをお伝えします。
ショートステイは“逃げ”ではなく“選択肢”
ショートステイとは何か?
ショートステイとは、正式には「短期入所生活介護」のこと。介護保険サービスのひとつで、介護者の負担を軽くする目的でつくられています。
短期間だけ介護施設に滞在することで、介護者がリフレッシュする時間を持つことができます。特に、以下のような場面で活用されることが多いです:
- 冠婚葬祭や出張など、一時的に家を空けるとき
- 介護疲れやストレスがたまってきたとき
- 介護者自身が体調不良や入院となったとき
利用できる施設とサービス内容
ショートステイでは、食事・入浴・排泄などの日常生活援助のほか、医療的な観察が必要な方には看護職員によるケアも提供されます。
施設によっては、認知症の方に配慮した環境や、リハビリの提供もあります。
地域の包括支援センターやケアマネジャーに相談することで、本人に合った施設を選ぶことができます。
「使ってよかった」というご家族のリアルな声
介護者にとっての“休息”の意味
ある娘さんは、夜間の介護が続いて限界寸前でした。ショートステイを提案したとき、最初は「母が寂しがるのでは」と不安そうでした。
でも、実際に利用してみると――
「母は思った以上に楽しそうでした。私も、久しぶりにぐっすり眠れて……」と、安心した表情で語ってくれました。
本人も“いつもと違う時間”を楽しむ
新しい場所に戸惑う方もいますが、環境に慣れると落ち着いて過ごせる方が多いです。
なかには、「レクリエーションが楽しかった」「ご飯が美味しかった」と話す方も。
実際に施設での表情が穏やかになり、帰宅後の様子にも良い変化があったという報告も少なくありません。
「預けること」に感じていた罪悪感
多くのご家族が口にするのは、「こんなに楽になるなら、もっと早く使えばよかった」という言葉。
介護は続けることが前提です。
そのためにも、安心して“休むこと”が必要です。
不安なく使うためのステップ
ステップ1:ケアマネジャーに相談する
まずは、担当のケアマネジャーに「ショートステイを使いたい」と伝えることが第一歩です。
希望の日程や事情を共有すれば、施設の候補を挙げてくれます。
ステップ2:必要なものを準備する
初回は以下のような準備をしておくと安心です:
- 服薬情報と薬
- 着替えやスリッパ
- 食事の好き嫌いや生活習慣のメモ
- 写真やぬいぐるみなど安心グッズ
スタッフはこうした情報をもとに、本人がリラックスして過ごせるよう支援してくれます。
ステップ3:1泊2日から試してみる
いきなり長期間ではなく、まずは1泊から始めるのがおすすめです。
本人も家族も、短い時間からなら受け入れやすくなります。
「まずはお試しで行ってみようか」
そんな気軽な気持ちで使ってみると、意外とスムーズに受け入れられるものです。
まとめ:迷ったときこそ、選択肢を広げよう
以下に、今回のポイントをまとめます:
- ショートステイは介護者の「休む権利」を支える仕組みです
- 預けることは「放棄」ではなく「持続するための工夫」です
- 本人も、施設での経験からポジティブな刺激を得ることがあります
- 利用者・家族ともに“次の選択”を考える余裕ができます
- 迷ったら、まずはケアマネジャーに相談を
- 1泊からの利用で、様子を見ながら無理なく始められます
- 情報共有と準備ができていれば、不安はぐっと減ります
介護は「誰かを支える」営みであると同時に、「自分も支える」ための時間が必要です。
この記事が、その一歩になれば嬉しいです。
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不安になったら、一人で抱え込まず、この記事を開いて確認しましょう。
あなたのケアの一歩が、明日の安心につながりますように。