「母のために通所を始めたのに、逆に疲れさせてしまった気がする」
回復期リハビリ病棟で働いていると、そんな声をよく耳にします。
介護者にとって、通所介護(デイサービス・デイケア)は魅力的な選択肢である一方、「本当にうちに合っているの?」「悪化しない?」という不安や戸惑いがつきまといがちです。
この記事では、共働きで育児と介護を抱える“サチコさん”のような方へ向けて、通所介護をめぐる5つの誤解と、看護師としての現場視点をもとにした「安心できる見極め方」をお伝えします。
通所介護は“ただの預かり”?
「とりあえず安全に過ごさせる場所」というイメージが先行しがちですが、通所介護は身体機能の維持・社会参加の促進・家族の負担軽減など、目的が明確に設定された専門的な支援サービスです。
特に、通所リハビリ(デイケア)では、理学療法士や作業療法士などの専門職がリハビリを行い、生活機能を取り戻す支援を行います。
私が関わったケースでは、通所開始から1か月で移動能力が安定し、食事の量や表情に明らかな変化が現れました。
「預かり」ではなく、「機能と心を取り戻す場所」としての通所介護を、ぜひ知ってほしいと思います。
通所に行くと疲れてしまう?
「通所のあと、なんだかぐったりしている」――そんな様子を見ると、不安になりますよね。
ですが、新しい環境に慣れるまでの一時的な疲労感である場合も多いのです。特に、認知機能や体力が低下している高齢者は、変化に敏感です。
実際、数回通って環境に慣れることで、むしろ生活リズムが整い、笑顔が戻る方もいらっしゃいます。
「疲れて見える=合わない」と決めつける前に、「いまは慣れていく途中かもしれない」と見守る視点が安心につながります。
利用するのは重度の人だけ?
「要介護5の人しか使えないんでしょ?」という誤解も根強いです。
実際には、要支援1から利用可能で、「今の状態を維持したい」「孤立を防ぎたい」といった理由から、比較的元気な方も多く利用しています。
「通所に行くと人と話せるし、生活にメリハリがつく」と笑っていた方の姿を、私は何度も見てきました。
通所介護は、「悪くなってから使う」のではなく、「悪くならないために使う」という考え方が、これからは大切になります。
家族が見るべきなのでは?
「人に任せるなんて申し訳ない」「自分で全部やらないといけない」――そんなふうに、がんばりすぎていませんか?
確かに、家族が関わることには大きな意味があります。でも、介護は“持久戦”です。
「通所の日があるだけで、自分にも余裕ができて、母に優しくできた」という家族の言葉が、今も忘れられません。
頼ることで、関係が変わることもあります。「自分のためにも、通所を選ぶ」という視点、あっていいんです。
手続きが難しそうで動けない
「介護保険って複雑そう」「どこに相談すれば?」と悩んでいるうちに、月日が過ぎてしまう方も少なくありません。
でも、大丈夫です。申請や施設選びは、**ケアマネジャー(介護支援専門員)**が一緒に進めてくれます。
「どこかに相談したいけど、誰に?」と迷ったときは、地域包括支援センターに電話をしてみてください。はじめの一歩は、そんな小さな行動から始まります。
看護師が見てきた通所の力
ある日、通所先で風船バレーに参加していた女性が、ポン、と軽く笑いました。数か月ぶりのその笑顔を見て、付き添いの娘さんは涙ぐんでいました。
こうした“その人らしさ”が戻る瞬間は、記録には残らなくても、私たち看護職の心に強く刻まれます。
通所介護には、「生活の機能を回復させる力」だけでなく、「人とのつながりの中で心を動かす力」があるのだと、私は実感しています。
最後に:迷っているあなたへ、6つのチェックリスト
- 通所に対して、「悪い印象」だけが先行していませんか?
- 家族の負担感、見て見ぬふりをしていませんか?
- 「自分が全部やらなきゃ」という思いに縛られていませんか?
- 「1回試してみる」だけでも、何かが変わるかもしれません
- 相談窓口が分からなくて、行動を止めていませんか?
- 「今」動くことで、未来の選択肢を増やせるかもしれません
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いざという時の安心のために、ぜひ保存しておいてください。
不安になったら、一人で抱え込まず、この記事を開いて確認しましょう。
あなたのケアの一歩が、明日の安心につながりますように。