「自宅で吸引してみたけれど、これで合ってるのか不安で…」
そんな声を訪問先でよく耳にします。特に在宅介護を始めたばかりの方にとって、吸引は“やらなきゃいけないけど怖い”ケアの一つ。
でも大丈夫です。
この記事では、現役看護師の視点から、口腔吸引を安全に行うための5つのステップを丁寧にお伝えします。
完璧を目指す必要はありません。
“やさしさ”と“気づき”があれば、安心してケアできます。
ステップ1:吸引の準備を整える
必要物品の確認と体位調整
吸引前に整えておくことで、焦らずにケアできます。
用意するものは次のとおりです:
- 吸引器
- 使い捨てカテーテル
- 手袋・ガーゼ・滅菌水・アルコール綿
- 清潔なタオル
本人は頭を30〜45度上げた姿勢が安全です。
吸引圧は一般的に80〜120mmHgが目安。不安があれば、医療者に遠慮なく相談しましょう。
声かけも忘れずに。「今からお口の中をきれいにしますね」と伝えるだけで、安心感が高まります。
ステップ2:カテーテルの挿入方法
やさしく・浅く・なでるように
「どこまで入れていいの?」
→ 基本は、歯ぐきの内側に沿って浅く挿入します。喉の奥に向けて入れると、嘔吐反射を引き起こす恐れがあります。
吸引のタイミングは、以下のようなときです:
- よだれが溜まっている
- ゴロゴロ音がする
- 咳き込んでいる
カテーテルは力を入れず、ゆっくり・なでるように動かすのがポイントです。
ステップ3:吸引時間と圧の管理
短く、やさしく、確実に
1回の吸引は10〜15秒以内を目安にしましょう。
長く行うと酸素不足や粘膜へのダメージにつながります。
吸引圧も「少し弱いかな」くらいがちょうどよいこともあります。
焦らず、“吸いきる”より“残さない”工夫が大切です。
ステップ4:吸引後の口腔ケア
清潔と保湿で快適さをキープ
吸引後は、ガーゼで口元をやさしくふき取りましょう。
乾燥していれば、保湿ジェルやワセリンも活用してください。
吸引は唾液や水分も除去するため、そのあとのケアが重要です。
やさしい処置の積み重ねが、信頼と安心につながります。
ステップ5:観察と振り返り
前・中・後の変化を見逃さない
観察は次の3つのタイミングに分けて行うと効果的です:
- 吸引の前:「呼吸が早くないか」「表情はつらそうでないか」
- 最中:「顔色の変化」「強い咳き込み」「苦しそうな様子」
- 後:「呼吸が整っているか」「疲れていないか」
異変に気づいたら、医療者に相談するのがおすすめです。
よくある失敗とその対策
「ついやってしまいがち」なポイント
- 使い捨てカテーテルの再利用
- カテーテルを入れながら吸引してしまう
- 吸引を急ぎすぎる
どれも、口腔内の傷や感染リスクを高めます。
ゆっくり・やさしく・様子を見ながら行うことで、確実に安全性が高まります。
家族として知っておきたいこと
吸引は肺炎の予防につながる
嚥下機能が低下した方は、唾液が肺に流れ込みやすくなります。
吸引は誤嚥性肺炎の予防として、とても大切なケアです。
頻回の吸引は逆効果になることも
「念のため」と頻繁に吸引することで、粘膜が傷つくケースもあります。
出血が見られたら、いったんお休みして、医療者に相談しましょう。
まとめ:完璧じゃなくていい
吸引は、テクニックよりも「やさしさと観察力」が大切です。
完璧を求めず、一歩ずつ“気づく力”を育てていきましょう。
✅ 安心の5ステップチェックリスト
- 必要物品と吸引器の準備ができた
- 体勢を整えてから吸引した
- カテーテルの挿入とタイミングを見極めた
- 終了後は口腔ケアを行った
- 観察記録を取り、気になることを医療者に相談した
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