「動かないんです。話もしない…。どうしたらいいか分からなくて」
——夜中の2時半。私のスマホに、介護者さんからの一本の電話が入りました。
静かな声でした。けれど、その奥には、判断の重さと孤独な不安がにじんでいました。
高齢の家族が夜中に「いつもと違う」様子を見せたとき、
多くの人が迷います。
「救急車を呼ぶべき?」
この記事では、これまで紹介してきたケースをもとに、判断の軸となる5つの視点を整理しています。
「大ごとにしたくない」
「でも、何かあったら後悔するかも」
そんなふうに、不安と責任感のはざまで揺れるキーパーソンの方へ。
今夜、あなたの迷いが少しでも軽くなるよう、現場の視点から言葉を届けます。
なぜ、夜は判断が難しく感じるのか
ひとりの責任感が、静けさの中で増すから
夜は、誰かに相談したくても連絡できず、ひとりで判断する重圧を強く感じる時間帯です。
静けさが不安を大きくする
家中が静まり返り、自分の五感だけが頼りになると、ほんの少しの変化でも強く不安を感じやすくなります。
疲れた頭では判断も鈍る
一日介護や仕事を終えて、心身ともに疲れている夜は、普段ならすぐ決断できることでも、迷いやすくなります。
「動かない方がいいかも」というためらいが生まれるから
夜は選択肢が限られており、「119しかない」と思うことで、逆に判断が鈍ることがあります。
医療機関にアクセスしにくい
夜間は多くの診療所や訪問看護が閉まっており、「病院に行く=救急車」の構図になりがちです。
救急車を呼ぶ=大ごとに感じる
深夜のサイレン、近所の目…。そう思って、我慢してしまう方も少なくありません。
「大げさかもしれない」と「何かあったら後悔する」の板挟み
多くの介護者が「呼ばなければよかった」と「呼ばなくて後悔した」の間で揺れます。
呼びすぎと思われたくない
「大したことなかったら恥ずかしい」そんな気持ちがブレーキになります。
けれど、何かあったら一生後悔する
その迷いがある時点で、すでに「いつもとは違う」と気づいている証拠です。
判断の基準は「時間」ではなく「症状」
「何時か」より「どうなっているか」を見る
夜中であっても、症状が深刻であれば、ためらう必要はありません。
昼間だったら、どう判断しますか?
「昼間なら呼んでいたかも」と思うなら、それがあなたの本音かもしれません。
症状を軸に判断する
意識がぼんやり、呼吸が浅い、体が動かない、強い痛みがある——これらがあれば、迷わず対応を。
夜だからといって医療の判断は変わらない
医療機関も救急隊も、夜間に備えて待機しています。
医療者は24時間対応の体制です
夜間に救急車を呼ぶことは、決して非常識ではありません。むしろ、そのための体制が整えられています。
夜の不安はみんな同じ
あなたが感じている迷いや怖さは、決して特別なものではありません。他の介護者も経験しています。
あらかじめ備えておくと、迷いが減る
夜間に起こりうることを想定して準備しておくと、いざという時に慌てずに動けます。
書類・持ち物の整備
お薬手帳、保険証、かかりつけ医の連絡先などは、すぐに取り出せる場所にまとめておきましょう。
#7119の登録
「119か、どうか分からない」ときに、看護師が電話で相談にのってくれる#7119(地域によって利用可)も、心強い選択肢です。
あなたの「夜間緊急対応プラン」を作りましょう
平常時にこそできる準備があります
慌てているときより、落ち着いている今のほうが、準備ははかどります。
「もしも」を想像してみる
「夜中に呼吸が苦しそうになったらどうする?」と想像してみるだけで、行動の選択肢が明確になります。
冷蔵庫にチェックリストを貼っておく
「呼吸確認」「意識確認」「迷ったら#7119」など、簡単なリストを目につく場所に貼っておくと安心です。
感情の準備も、行動と同じくらい大事です
夜間の迷いに備えるのは、物理的なことだけではありません。
迷うことは、責任感の証です
「判断できない自分が情けない」と思う必要はありません。迷うのは、それだけ真剣に向き合っている証拠です。
完璧じゃなくていい
必要なのは、「誰かを守りたい」と思う気持ち。その気持ちこそ、何より大切な備えです。
終わりに:迷いは、愛情の証です
「こんなことで救急車を呼んでいいのかな…」
「もし何もなかったら、迷惑じゃないかな…」
そんなふうに、夜中に検索しているあなたは、
すでに立派な“備え”を始めています。
判断に「絶対の正解」はありません。
けれど、「いつもと違う」と感じたその直感は、
まぎれもない“気づき”です。
それが、行動の起点になります。
☎ #7119も活用しましょう
夜間や休日、救急車を呼ぶか迷ったときには、「#7119」が頼りになります。
看護師などの専門職が電話で相談に応じ、症状の緊急度や対処法を一緒に整理してくれます。
地域によって対応状況が異なるため、事前に確認し、スマホに登録しておくのもおすすめです。
✅ 救急車を呼ぶか迷ったときの5つの確認
- 意識がぼんやりしている、呼びかけに反応しない
- 呼吸が浅い、または苦しそう
- 倒れて立てない、動けない
- 胸痛、頭痛、腹痛など強い痛みがある
- 直感的に「いつもと違う」と感じる
ひとつでも当てはまるなら、迷わず119を。
あなたの判断は、誰かの命を守るかもしれません。
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あなたのケアの一歩が、明日の安心につながりますように。