「鼻にカテーテルを入れすぎて、血が出てしまって…」
そんな不安そうな声を、訪問看護で何度となく聞いてきました。
鼻腔吸引は、慣れないうちはとても怖く感じる処置です。
でも、ちょっとした工夫や視点の変化で、“怖い”から“安心”へと変わることも多いのです。
この記事では、鼻腔吸引中に出血を起こさないために、現場で効果があった6つの具体的な工夫をご紹介します。
「難しい」「怖い」「正解がわからない」そんな声に、看護師の立場からそっとお応えします。
吸引前に押さえておきたい基本
正しい準備が安心につながる
吸引器の準備と体勢づくりで、ケアの半分は決まります。
- 吸引器・カテーテル・手袋・滅菌水などをそろえる
- 吸引圧は80〜120mmHgが目安
- ベッド上で頭をやや後方に傾け、鼻腔がまっすぐになるよう調整
「少し鼻の中をきれいにしますね」と伝えるだけでも、ご本人の安心感は変わります。
カテーテルの角度と深さに注意
挿入時は鼻の底をなぞるように、まっすぐやさしく。
- 深さは成人で8〜10cmが目安(個人差あり)
- 挿入時は吸引をかけず、引き抜くときに吸引する
少しでも抵抗を感じたら、無理せず引き戻す判断も大切です。
吸引時間は短く、回数でカバー
1回10〜15秒以内が安全の目安です。
- 吸引は短く区切って数回に分けるのがおすすめ
- 強く吸いすぎず、やさしい圧で行うことが粘膜保護につながります
出血を防ぐための6つの工夫
①「押し込まない」意識を持つ
力任せに挿入しないだけで、出血リスクは大きく下がります。
②表情と動きの変化を見逃さない
顔をしかめる、身体がピクッと動く…そんなサインに気づいたら、
**「すぐに中断→深さを調整」**が正解です。
③カテーテルは使い捨てを徹底する
再利用は感染だけでなく、素材の劣化による摩擦傷の原因になります。
④挿入しながら吸引しない
吸引は、カテーテルを引き出すときのみ。
挿入と吸引を同時にすると、粘膜への負担が一気に増します。
⑤出血が見えたら「その日はお休み」
少量の血が混ざっていたら、いったん吸引を中止し、鼻を休ませましょう。
不安がある場合は、訪問看護師や主治医に相談するのがおすすめです。
⑥吸引後の鼻腔ケアも忘れずに
- ガーゼや綿棒で鼻の周りをやさしく拭き取る
- 必要に応じて生理食塩水で保湿ケア
小さなケアの積み重ねが、「痛くない吸引」につながります。
ケアの質を高める視点
鼻腔吸引は「見えないからこそ難しい」
口の中と違い、鼻腔は構造が複雑で、見えない不安が大きい場所です。
「何度も経験するうちに慣れるもの」と言われても、最初はやっぱり怖い。
そんなときは、“1手順だけ丁寧にやる”と決めることが、第一歩になります。
反応を「見る・聴く・感じる」
- 表情の変化
- 呼吸音の変化
- 体のこわばり
こうした微細な反応を観察する力が、実は最も大切な技術です。
「うまくできなかった日」も記録に残す
「この日は出血した」「今日はスムーズだった」
どんな経験も、ケアの財産になります。
感じたことや気づいたことを、メモに書き留めておくと、
次の訪問看護のときに一緒に振り返る材料になります。
まとめ:鼻腔吸引は「丁寧さ」がすべて
鼻腔吸引に「完璧」は求めなくて大丈夫です。
大切なのは、ご本人の様子を見ながら、無理のない範囲で行うこと。
✅ 出血を防ぐための6つの工夫(再掲)
- 必要物品と体勢を整える
- 挿入は浅く・やさしく・ゆっくり
- 吸引は引き抜き時に短く行う
- ご本人の反応を観察して中止判断も
- 出血が見えたらその日は休む
- 鼻腔内の清潔・保湿ケアも忘れずに
鼻腔吸引に対する不安が、少しでも軽くなりますように。
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あなたの経験が、次の誰かの安心につながります。