「もしかして、私が悪かったんでしょうか……?」
吸引中にお父さんの様子が急に変わり、呼吸が浅くなり、血が混じった。そう話してくれた娘さんの声は、驚きと不安で震えていました。
吸引は、命に関わるケアです。やり方を間違えたらどうしよう。出血したらどうすればいいの?
そんな迷いがよぎるのは当然のことです。
この記事では、吸引中に起こりうる6つの異常とその対応について、現場経験に基づいてやさしく整理します。
「吸引 異常 対処 落ち着かない」——この言葉で検索してきた方に、少しでも安心と手がかりを届けられますように。
呼吸が苦しそうなときは
呼吸の変化を見逃さないために
吸引中に呼吸が荒くなったり、SpO₂(酸素飽和度)が下がったりすると、「このまま続けて大丈夫?」と不安になりますよね。
実際、吸引の時間が長すぎたり、事前の酸素投与が不十分な場合、呼吸の変化は起こりやすくなります。
私は以前、訪問中のご家族が「吸引したら苦しそうにしていて……」と泣きながら連絡をくれたことがありました。確認すると、吸引の時間が20秒近くになっていたのが原因でした。
対応のポイントは「一旦止める」
そんなときは、まず吸引をいったん中断してください。酸素投与や深呼吸で様子を見て、落ち着いたら10秒以内を目安に再開しましょう。
「中断してもいい」という安心感が、次の冷静な判断につながります。
吸引中に血が混じったら
血が出た=失敗ではありません
吸引中に血が見えたら、誰だって驚きます。でも、必ずしも「大きなトラブル」とは限りません。
たとえば、粘膜が弱い方は少し擦っただけでも出血することがあります。
私の経験でも、「毎回、少し血が混じるけど問題はない」と医師から説明されたケースがありました。
出血のサインと行動の目安
・鮮やかな赤→浅い傷の可能性
・暗い血や止まらない→すぐに吸引を中止し、看護師や医師に相談しましょう
擦らないようにゆっくり引き抜く、回しながら抜く、という動作の工夫も出血予防になります。
嘔吐・誤嚥が起きたら
食後すぐの吸引は避けましょう
食後すぐに吸引をすると、嘔吐や誤嚥のリスクが高まります。喉が刺激されて反射的に吐いてしまうことも。
私の現場でも、昼食後すぐに吸引してしまったことで、吐物を誤嚥し、肺炎を起こしたケースがありました。それ以降、必ず「食後30分は空けてから吸引」をお伝えしています。
嘔吐時の安全な対応
もし嘔吐が起きたら、すぐに身体を横向きにして、誤嚥を防ぎましょう。吸引は落ち着いてから再開します。
その後1〜2日は、咳・熱・呼吸音に変化がないかを観察してみてください。
チューブの異常や詰まりに気づいたら
「音はするのに吸えない」ときは?
吸引音がしているのに、痰が出てこない。そんなときは、カテーテルが詰まっているか、どこかが外れているかもしれません。
私が訪問したご家庭では、チューブが枕の下で折れていて吸引できていなかったケースがありました。見た目だけでは分からないので要注意です。
詰まり・異音は早めに確認を
・カテーテルが固くなっていたら交換する
・吸引ボトルが満杯でないか確認する
・チューブの接続部や吸引圧の設定をチェックする
少しの違和感でも、早めの確認で防げることがたくさんあります。
判断に迷ったとき、どうすればいい?
「これは連絡すべき?」と思ったら
迷ったときは、「いったん中断して、観察する」「すぐに医療者に相談する」のが基本です。
あなたの「何か違う」という感覚は、とても大切です。
医療者に伝えるべきポイント
・どんな症状がいつ起きたか
・吸引の時間や状況
・使用していた機器や設定
あらかじめメモや用紙に書いておくと、いざというとき落ち着いて話せます。
焦っているとき、落ち着くためにできること
吸引中の「頭が真っ白」に備える
動揺してしまうのは当然です。だからこそ、事前に「これだけは見る」と決めておくと安心です。
【吸引時の安心ステップ】
- まず止める
- 呼吸と表情を観察
- 酸素や体位を調整
- 看護師に相談する
自分を責めない習慣を
吸引で何か起きたとき、自分を責めすぎないでください。私も、うまくできなかった日の夜は眠れなかったことがあります。
でも今では、「準備が足りなかったな」「次は○○してみよう」と振り返ることにしています。
まとめ:あなたの手で守れることがある
吸引は、誰かを守る行為です。
だからこそ、怖さや迷いがあるのは自然なこと。けれど、あなたの備えと観察の力が、その人の命を守っています。
チェックリスト:
- □ 吸引は10秒以内で行う
- □ 食後30分は吸引を避ける
- □ SpO₂・呼吸を確認しながら吸引する
- □ 出血・嘔吐・反応の変化があればすぐ中止
- □ 医療者への連絡先を目につく場所に
- □ 「落ち着いてできる環境」を整えておく
- □ 自分自身の不安にも目を向ける
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あなたの経験が、誰かの心を軽くするきっかけになりますように。