高齢者の転倒が繰り返す4つの原因と防ぐ5つの工夫|看護師が解説
「気をつけているのに、また転んでしまった」「一度転んでから、転倒が続くようになった」——そんな悩みを抱えているご家族は少なくありません。
転倒が繰り返される理由は、「注意が足りない」からではありません。筋力低下・薬の副作用・住環境・認知機能という4つの要因が重なって起きています。原因がわかれば、対策は必ずとれます。
私は回復期リハビリテーション病棟で7年以上働いてきた看護師です。「転倒を繰り返す患者さん」には必ずパターンがあることを、現場で何百人もの事例を通じて実感してきました。この記事では、繰り返す転倒の4つの原因と、今日からできる5つの対策をお伝えします。
転倒が繰り返す4つの原因
原因①:筋力・バランス感覚の低下
転倒を繰り返す最も多い理由は筋力とバランス感覚の低下です。加齢とともに、「足をしっかり上げる」「ふらついたときに踏ん張る」「片足でバランスを取る」といった動作が難しくなります。
特に注目すべきは「大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)」の低下です。この筋肉が弱くなると、段差でつまずいたときに足が上がりきらず、転倒につながります。
- 立ち上がるときにふらつく
- ゆっくり歩いているのに足がもつれる
- 片足立ちが難しくなりズボンを履くときによろける
- 信号を渡り切れずに焦って転びそうになる
原因②:薬の副作用(見逃されやすい最大の盲点)
現場で最も見逃されやすいのが、薬の副作用による転倒リスクの増大です。
高齢者が複数の薬を服用している場合(ポリファーマシー)、以下の薬種が特に転倒リスクを高めることが知られています。
- 睡眠薬・抗不安薬:翌朝まで眠気・ふらつきが残る「持ち越し効果」が起きやすい
- 降圧薬(血圧の薬):立ち上がった際に血圧が急低下する「起立性低血圧」を引き起こすことがある
- 利尿薬:夜中のトイレの回数が増え、眠い状態で移動するリスクが高まる
- 抗ヒスタミン薬(花粉症・アレルギーの薬):眠気・注意力低下を引き起こすことがある
看護師のここだけの話:「転んでから薬を見直したら、ぴたりと転倒が止まった」という事例は珍しくありません。現在服用している薬のリストを持参して「転倒のリスクになっている薬はないか」と主治医に確認することを強くおすすめします。
原因③:住環境の危険(慣れた家ほど油断しやすい)
「慣れた家だから大丈夫」は危険な思い込みです。身体機能が低下すると、これまで問題なかった環境が一気に転倒の原因になります。
- カーペットの端のめくれ・電気コードの出っ放し
- 浴室・玄関・廊下の濡れた床・滑りやすい床材
- 夜間のトイレ動線が暗い(足元灯がない)
- 手すりのない階段・浴室・玄関
- 毛足の長い絨毯(すり足歩行の方には特に危険)
原因④:視力低下・認知機能の低下
視力が低下すると段差や障害物の距離感がつかみにくくなります。認知機能が低下すると、「危険だ」と察知する判断スピードが遅れます。特に夜間・暗がりでの転倒は視力低下と認知機能低下の複合リスクが高まります。
転倒しやすい高齢者の特徴とセルフチェックはこちらをご覧ください。

転倒を防ぐ5つの工夫
工夫①:筋力・バランスを鍛える運動を毎日の習慣にする
椅子に座ったまま・手すりにつかまったまま行える安全な運動から始めましょう。
- かかと上げ運動:ふくらはぎを鍛え、歩行の安定感を高める。椅子に座ったまま10回×3セット
- 片足立ち:壁や手すりにつかまりながら片足を数秒上げる。左右各30秒×2セット
- 椅子からの立ち座り:手を使わずゆっくり立ち上がる。5回×2セット
- 足踏み運動:その場で足を高く上げながら歩く動作。1分×2セット
より専門的な転倒予防運動についてはこちらをご覧ください。

工夫②:服用中の薬を主治医に見直してもらう
転倒が続いているなら、薬の確認は最優先で行うべき対策です。現在飲んでいる薬をすべてリストにして、次の受診時に「転倒のリスクになっている薬はないか確認してほしい」と伝えてください。これだけで転倒が劇的に減る場合があります。
工夫③:住環境の危険箇所を今日チェックする
以下の場所を今日中に確認してください。
- トイレ・浴室・廊下・玄関に手すりがあるか
- 夜間の移動経路に足元灯があるか
- カーペットの端・電気コードが足元にないか
- 滑りやすい床に滑り止めマットが敷いてあるか
- 毛足の長い絨毯を撤去できるか
手すりの設置・段差解消は介護保険の住宅改修費(上限20万円)で補助が受けられます。ケアマネに相談してみてください。
工夫④:滑りにくい靴・補助器具を活用する
履物は転倒予防の基本です。かかとのないスリッパは室内でも転倒リスクが高くなります。
- かかとがしっかり覆われた室内履きに変える
- 靴底が滑りにくい素材のものを選ぶ
- 杖・歩行器・シルバーカーは「まだ早い」という段階から導入する
- ベッドサイドに手すりをつけ、立ち上がりをサポートする
工夫⑤:転んでもケガを最小限にする「ダメージ軽減」策
転倒ゼロは難しいため「転んでも大けがをしない」準備も必要です。
- よく転ぶ場所の床にクッション性のあるマットを敷く
- 家具の角にクッション材を取り付ける
- 骨粗しょう症の治療を並行して行い骨を強くしておく
- 転倒後の初動対応(意識・頭部・痛みの確認)を家族全員で共有しておく
転倒直後の初動対応についてはこちらをご覧ください。

転倒が引き起こす骨折・寝たきりのリスクも知っておこう
転倒対策と並行して「転んだ場合に何が起きるか」を知っておくことも重要です。特に骨折→寝たきりという経過は思っているより早く訪れます。

まとめ:今日からできるアクションチェックリスト
転倒が繰り返されるのは「注意が足りない」からではなく、4つの要因が重なっているからです。一つずつ対策を取ることで、転倒のリスクは確実に減らせます。
- 転倒の原因が「筋力・薬・環境・認知機能」のどれか(または複数か)を確認する
- 服用中の薬リストを作り、次の受診時に「転倒リスクになる薬はないか」と確認する
- 今日中に自宅の手すり・足元灯・カーペットの状態を確認する
- 毎日5分でもかかと上げ・片足立ちを習慣にする
- 転倒後の初動対応(意識・頭部・痛みの確認)を家族で共有しておく
「転ばないようにする」より「転んでもケガをしない環境」を整えることが、長く安心して暮らすための本当の対策です。
このページをブックマークしておけば、いつでも確認できます。
いざという時の安心のために、ぜひ保存しておいてください。
不安になったら、一人で抱え込まず、この記事を開いて確認しましょう。
他にも、下記テーマの記事があります。
あなたのケアの一歩が、明日の安心につながりますように。







見てきたことを書いています。