圧迫骨折で入院しても動けない5つの理由|看護師解説
「入院したのに、どうしてまだ動けないんだろう?」ご家族のそんな声を、回復期病棟の現場で何度も耳にしてきました。圧迫骨折で入院したからといって、必ずしも安心できるわけではありません。「入院=回復」ではなく、「入院=回復への準備期間」と捉える視点が必要です。
私は回復期リハビリテーション病棟で7年以上働いてきた看護師です。この記事では、圧迫骨折で入院後に「動けない」と感じる主な理由と、その対策を5つの視点から解説します。看護師としての経験に基づいたリアルな気づきをもとに、家族として「何ができるか」を一緒に考えていきましょう。
動けない理由①:安静による筋力低下
入院直後は安静が指示されることが多く、その間に筋肉が著しく低下することがあります。とくに高齢者では、3日間寝たきりになると下肢筋力が約10〜15%低下するといわれています。これを予防するには、早期離床とリハビリ開始のタイミングを逃さないことが大切です。
私の経験では、リハビリを1日でも遅らせることで、その後の回復に数週間の差が出ることもありました。リハビリの介入が早かった方は、退院後も自宅での生活にスムーズに移行できる傾向があります。
- 担当看護師やリハビリスタッフに「今日はどこまで動いてもいいですか?」と声をかける
- ベッド周囲の環境を整えて、動きやすい状態をつくる
動けない理由②:痛みや再骨折への不安
動かない理由として、「また折れるのでは」「痛いからこわい」といった心理的要因も大きく影響します。高齢者では痛みに対する耐性が低く、痛み=動けないという学習が成立してしまうと、リハビリの意欲自体が失われます。
このとき必要なのは、「少しずつできることを増やしていく」という安心感です。「今日は5分だけ座ってみよう」「腕を動かすだけでもOK」といった小さな成功体験を積み重ねることで、本人の自信につながります。
- 「大丈夫、無理しなくていいよ」と声をかけて安心感を与える
- 動けたときには「すごいね」「頑張ったね」と肯定的なフィードバックを忘れない
動けない理由③:入院環境による生活力の低下
病院は「治療の場」であり、「生活の場」ではありません。そのため、食事・排泄・整容など、あらゆることを”してもらう”環境が整っています。しかし、この便利さが裏目に出てしまい、ADL(日常生活動作)の自立度が低下してしまうことがあるのです。
たとえば、入院前は自分でトイレに行けていたのに、入院中はポータブルトイレやオムツになり、そのまま退院後も依存状態になるケースもあります。
- トイレに行ける環境があるか、病院スタッフに確認する
- 可能であれば、食事や洗面など”自分でできること”は支援しすぎない
動けない理由④:せん妄や認知機能の変化
「夜中にうろうろしていた」「誰かが来るって言って聞かない」——入院後、突然こうした症状が出てきたら、せん妄(急性の混乱状態)を疑います。せん妄の発生率は高齢者の入院患者で15〜40%とされており(MSDマニュアル プロフェッショナル版)、特に環境の変化や夜間の不眠が原因となります。
認知症との違いを見極めるのは難しいですが、せん妄は一過性で回復が見込める状態です。
- 日中に会話や軽い運動を促す
- 時計やカレンダーを病室に置いて”今”を意識しやすくする
- 無理に否定せず、「そうなんだね」と共感的に受け止める
せん妄と認知症の違いをより詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

動けない理由⑤:退院後の生活が見えない不安
「また動けなくなったらどうしよう」「介護が必要になったら?」と、退院後の生活に対する不安は患者本人にも、ご家族にもつきものです。先の見通しが立たないことが、リハビリへの意欲そのものを削いでしまうことがあります。
退院後の生活を具体的にイメージできると、「今、何のために頑張るのか」が見えてきます。早い段階で医療ソーシャルワーカーやケアマネージャーに相談し、退院後の生活像を一緒に描いておくことをおすすめします。
「入院しない」という選択肢も知っておく
ここまで読んで「そもそも入院が最善なのか」と感じた方もいるかもしれません。実は、圧迫骨折では在宅療養という選択肢も存在します。判断基準を知りたい方はこちらをご覧ください。

骨折が寝たきりにつながる仕組みをより深く理解したい方は、こちらの記事も参考になります。

まとめ:今日からできるアクションチェックリスト
「入院したのに動けない」という状況には、必ず理由があります。理由がわかれば、家族としてできることも見えてきます。
- リハビリ開始のタイミングをスタッフに確認し、早期離床を後押しする
- 「痛くて動けない」を否定せず、小さな成功体験から自信を積み重ねる
- 入院中も”自分でできること”を奪いすぎないよう環境を確認する
- 夜間の不穏やうろうろが見られたら、せん妄の可能性を疑い落ち着いて対応する
- 退院後の生活イメージを早めにMSW・ケアマネと一緒に描いておく
「動けない」のは、本人の頑張りが足りないからではありません。理由を知り、正しく支えることが、回復への一番の近道です。
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