「もしかして、私が悪かったんでしょうか……?」
吸引中にお父さんの様子が急に変わり、呼吸が浅くなり、血が混じった。そう話してくれた娘さんの声は、驚きと不安で震えていました。
吸引は、命に関わるケアです。やり方を間違えたらどうしよう。出血したらどうすればいいの?
そんな迷いがよぎるのは当然のことです。
この記事では、吸引中に起こりうる6つの異常とその対応について、現場経験に基づいてやさしく整理します。
吸引中の異常や、落ち着かない様子への対応に悩んでいる方に、少しでも安心と手がかりを届けられますように。
呼吸が苦しそうなときは
吸引中に呼吸が苦しそうになったら、まずいったん中断して様子を見ます。
呼吸の変化を見逃さないために
吸引中に呼吸が荒くなったり、SpO₂(酸素飽和度)が下がったりすると、「このまま続けて大丈夫?」と不安になりますよね。
実際、吸引の時間が長すぎたり、事前の酸素投与が不十分な場合、呼吸の変化は起こりやすくなります。
対応のポイントは「一旦止める」
そんなときは、まず吸引をいったん中断してください。酸素投与や深呼吸で様子を見て、落ち着いたら、主治医から指示された吸引時間を守って再開しましょう。
「中断してもいい」という安心感が、次の冷静な判断につながります。
吸引中に血が混じったら
血が混じっても、必ずしも大きなトラブルとは限りません。出血が続くときは中止して医療者に相談します。
血が出た=失敗ではありません
吸引中に血が見えたら、誰だって驚きます。でも、必ずしも「大きなトラブル」とは限りません。
たとえば、粘膜が弱い方は少し擦っただけでも出血することがあります。
私の経験でも、「毎回、少し血が混じるけど問題はない」と医師から説明されたケースがありました。
出血のサインと行動の目安
・鮮やかな赤→浅い傷の可能性
・暗い血や止まらない→すぐに吸引を中止し、看護師や医師に相談しましょう
擦らないようにゆっくり引き抜く、回しながら抜く、という動作の工夫も出血予防になります。
嘔吐・誤嚥が起きたら
食後すぐの吸引は避け、嘔吐したら体を横向きにして誤嚥を防ぎます。
食後すぐの吸引は避けましょう
食後すぐに吸引をすると、嘔吐や誤嚥のリスクが高まります。喉が刺激されて反射的に吐いてしまうことも。
私の現場でも、昼食後すぐに吸引してしまったことで、吐物を誤嚥し、肺炎を起こしたケースがありました。それ以降、「食後はしばらく時間を空けてから吸引する」ようお伝えしています。
嘔吐時の安全な対応
もし嘔吐が起きたら、すぐに身体を横向きにして、誤嚥を防ぎましょう。吸引は落ち着いてから再開します。
その後1〜2日は、咳・熱・呼吸音に変化がないかを観察してみてください。
チューブの異常や詰まりに気づいたら
吸えないときは、カテーテルの詰まりや接続、吸引ボトル、吸引圧の設定を確認します。
「音はするのに吸えない」ときは?
吸引音がしているのに、痰が出てこない。そんなときは、カテーテルが詰まっているか、どこかが外れているかもしれません。
詰まり・異音は早めに確認を
・カテーテルが固くなっていたら交換する
・吸引ボトルが満杯でないか確認する
・チューブの接続部や吸引圧の設定をチェックする
少しの違和感でも、早めの確認で防げることがたくさんあります。
判断に迷ったとき、どうすればいい?
迷ったら、いったん中断して観察し、すぐに医療者に相談するのが基本です。
「これは連絡すべき?」と思ったら
迷ったときは、「いったん中断して、観察する」「すぐに医療者に相談する」のが基本です。
あなたの「何か違う」という感覚は、とても大切です。
医療者に伝えるべきポイント
・どんな症状がいつ起きたか
・吸引の時間や状況
・使用していた機器や設定
あらかじめメモや用紙に書いておくと、いざというとき落ち着いて話せます。

焦っているとき、落ち着くためにできること
吸引中の「頭が真っ白」に備える
動揺してしまうのは当然です。だからこそ、事前に「これだけは見る」と決めておくと安心です。
【吸引時の安心ステップ】
- まず止める
- 呼吸と表情を観察
- 酸素や体位を調整
- 看護師に相談する
自分を責めない習慣を
吸引で何か起きたとき、自分を責めすぎないでください。私も、うまくできなかった日の夜は眠れなかったことがあります。
でも今では、「準備が足りなかったな」「次は○○してみよう」と振り返ることにしています。
まとめ:あなたの手で守れることがある
吸引は、誰かを守る行為です。
だからこそ、怖さや迷いがあるのは自然なこと。けれど、あなたの備えと観察の力が、その人の命を守っています。
チェックリスト:
- 吸引時間は主治医の指示を守る(目安:口・鼻は15秒以内、気管カニューレ内は10秒以内。厚生労働省の記載例)
- 食後すぐの吸引は避ける(空ける時間は主治医や看護師に確認)
- SpO₂・呼吸を確認しながら吸引する
- 出血・嘔吐・反応の変化があればすぐ中止
- 医療者への連絡先を目につく場所に
- 「落ち着いてできる環境」を整えておく
- 自分自身の不安にも目を向ける
もしこの記事が役に立ったら、SNSでのシェアやコメントをぜひお寄せください。
あなたの経験が、誰かの心を軽くするきっかけになりますように。
関連記事









見てきたことを書いています。