認知症のBPSDとは?暴言・徘徊・妄想に使える7つの安心策【看護師解説】
「最近、親が別人みたいになってしまった」「怒鳴る、疑う、夜中に起き出す——どうしたらいいのかわからない」——そんな声を、現場で何度も聞いてきました。
その変化には、名前があります。BPSD(認知症の行動・心理症状)です。
私は回復期リハビリテーション病棟で7年以上働いてきた看護師です。BPSDに悩む家族を何百人も見てきたからこそ伝えたいことがあります。BPSDは「性格が変わったのではない」。脳の変化が引き起こしている症状であり、正しく理解して対応すれば、必ず落ち着かせることができます。
この記事では、BPSDの正体と、家族がすぐに使える7つの安心策をお伝えします。
BPSDとは何か?認知症の「中核症状」との違いを知っておこう
認知症の症状は大きく2種類に分かれます。
- 中核症状:記憶障害・見当識障害・判断力の低下など、脳の損傷によって直接起きる症状。すべての認知症に現れる。
- BPSD(周辺症状):中核症状に加え、環境・心理・人間関係などの要因が重なって現れる行動・感情の変化。人によって出方が異なる。
重要なのは、BPSDは「脳の病気」+「不安・恐怖・孤独」が重なって起きるという点です。つまり、環境を整え、不安を和らげることで症状を軽減できる余地があります。
BPSDの主な症状:家族が最も困る6つのパターン
BPSDには様々な症状がありますが、家族が特に困るのは以下の6つです。それぞれの症状別に詳しい対応記事も用意しています。
- 暴言・暴力:突然怒鳴る、叩く、罵倒する
- もの盗られ妄想:財布を盗まれたと繰り返し訴える
- 徘徊・一人歩き:目的なく歩き回る、外に出ようとする
- 帰宅願望:「家に帰りたい」と繰り返す
- 独り言・叫び:大きな声で独り言を言う、叫ぶ
- 昼夜逆転・不眠:夜中に起き出す、昼間ずっと眠る
暴言への具体的な対応はこちらをご覧ください。

もの盗られ妄想への対応はこちらです。

徘徊・一人歩きへの対応はこちらです。

BPSDが起きる「3つの引き金」を理解する
BPSDには必ず「引き金」があります。引き金を知ることが、対応の第一歩です。
- 引き金① 環境の変化:入院・転居・部屋の模様替えなど、慣れた環境が変わったとき
- 引き金② 身体の不調:便秘・痛み・発熱・脱水など、言葉で伝えられない不快感があるとき
- 引き金③ 心理的な不安・孤独:一人にされた、否定された、無視されたと感じたとき
「なぜこのタイミングで?」と思ったら、この3つを確認することが最初のアクションです。
BPSD対応の7つの安心策:今日から使えるアプローチ
安心策①:否定せず「そうなんですね」と受け止める
BPSDの言動を「違う」「そんなことない」と否定すると、本人の不安と混乱が増し、症状が悪化します。まず「そうなんですね」「それは大変でしたね」と受け止めることが、すべての対応の基本です。
安心策②:声のトーンをワントーン下げて話しかける
興奮しているときに大きな声で話しかけると、本人の興奮がさらに高まります。ゆっくり、低く、穏やかなトーンで話しかけることで、自律神経が落ち着きやすくなります。言葉の内容より「声のトーン」が伝わる情報の8割を占めると言われています。
安心策③:身体の不調をまず確認する
突然BPSDが悪化したときは、便秘・脱水・発熱・痛みがないかをまず確認してください。認知症の方は不快感を言葉で伝えられないため、身体の不調がBPSDとして現れることがあります。
安心策④:「好きなこと・得意なこと」で気をそらす
本人が好きな音楽、昔好きだった作業、なじみの食べ物——これらは感情記憶として残りやすく、興奮を和らげる効果があります。「説得」より「気分転換」の方が、BPSDへの対応としてはるかに有効です。
安心策⑤:規則正しい生活リズムを整える
起床・食事・日光を浴びる時間・就寝を毎日同じリズムにすることで、脳内の混乱が落ち着きやすくなります。特に午前中の日光浴は、夜間の睡眠改善とBPSD軽減に直結するとされています。
安心策⑥:対応に行き詰まったら「その場を離れる」
家族が感情的になってしまいそうなとき、一番の対応は「その場を離れること」です。「ちょっとお茶を入れてきますね」と言って席を外すだけで、場の空気が変わり、本人の興奮が落ち着くことがあります。逃げることは正しい対応です。
安心策⑦:一人で抱えず、主治医・ケアマネに相談する
BPSDがひどい場合、薬による治療が有効なこともあります。「薬に頼ることへの罪悪感」を感じる方も多いですが、適切な薬の使用は本人の苦しみを和らげるためのものです。主治医やケアマネに「最近こういう症状が出ている」と具体的に伝えることが、治療の入口になります。
薬の見直しを考えるときの判断軸はこちらをご覧ください。

BPSDで家族が限界になる前に知っておきたいこと
BPSDへの対応は、長期戦です。だからこそ、家族自身のストレスケアが欠かせません。「もう限界かもしれない」と感じたときの逃げ道についてはこちらをご覧ください。

まとめ:BPSDは「性格の変化」ではなく「対応できる症状」
BPSDへの7つの安心策をまとめます。
- ① 否定せず「そうなんですね」と受け止める
- ② 声のトーンをワントーン下げて話しかける
- ③ 身体の不調をまず確認する
- ④ 「好きなこと・得意なこと」で気をそらす
- ⑤ 規則正しい生活リズムを整える
- ⑥ 対応に行き詰まったらその場を離れる
- ⑦ 一人で抱えず主治医・ケアマネに相談する
「人が変わってしまった」と感じる瞬間は、介護の中で最も心が折れやすい場面の一つです。でも、その変化には必ず理由があり、必ず対応できます。
あなたが今日も向き合っていることは、決して無駄ではありません。
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不安になったら、一人で抱え込まず、この記事を開いて確認しましょう。
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あなたのケアの一歩が、明日の安心につながりますように。








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