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認知症の危険行動(火・包丁・転倒)を防ぐ8つの対策|看護師が解説

目をはなした隙のもしもに備える

認知症の危険行動(火・包丁・転倒)を防ぐ8つの対策|看護師が解説

「目を離したすきにガスコンロをつけっぱなしにしていた」「包丁を持ち出そうとしていた」「廊下で転んでいた」——認知症の親の危険行動に、ハッとした経験はありませんか?

在宅介護では、24時間目を光らせ続けることは現実的ではありません。だからこそ、「危険が起きにくい環境を作る」先手の対策が何より大切です。

私は回復期リハビリテーション病棟で7年以上働いてきた看護師です。夜勤中に廊下を走る患者さんを全力で追いかけたことも、熱湯での火傷手当てを何度もしたこともあります。現場で見てきたからこそ伝えられる、今日からできる8つの具体的な安全対策をお伝えします。

著者について
  • 看護師8年目
  • 退院支援・ご家族との面談を多数担当
  • 正解のない選択に、何度も立ち会ってきた
  • 父、祖母の介護・看取りを家族として経験
現場で
見てきたことを書いています。
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認知症の危険行動とは?日常に潜む5つのリスク

認知症が進行すると、これまで当たり前にできていた状況判断が難しくなります。危険行動は本人の悪意や不注意ではなく、脳の機能低下によって危険を正しく認識できない状態から起きています。

特に注意すべき5つの危険は以下の通りです。

  • 火の不始末:コンロに火をつけたまま忘れる、鍋を空焚きにする
  • 刃物・薬の誤操作:包丁の取り扱い間違い、薬を一度に大量に飲んでしまう
  • 転倒・骨折:身体能力を過信して一人で歩こうとし転倒する(骨折→寝たきりにつながるリスク大)
  • 交通事故:交通ルールを忘れて道路に飛び出す
  • 一人歩き・迷子:外に出て道に迷う(徘徊)

「どうしてこんなことをするの!」と怒りたくなる気持ちはわかりますが、ご本人もパニック状態です。不安や混乱がBPSDとして表れていることを理解することが、対策の第一歩になります。

BPSDの全体像についてはこちらをご覧ください。

対策①:刃物・薬・洗剤を「見えない場所」に移動する

最も即効性があるのは、物理的に危険なものを遠ざけることです。ハサミ・包丁などの刃物、誤飲の危険がある洗剤や大量の薬は、手の届かない高い場所か、鍵のかかる収納へ今すぐ移動させましょう。

「使うときに不便だから」と出しっぱなしにするのは認知症介護においては危険な落とし穴です。本人の目に入らないようにするだけで、衝動的な危険行動の多くを未然に防げます。

対策②:火の事故を防ぐ——IH化と給湯器温度の設定

火災と火傷は命に関わるため、最優先で対策が必要です。

  • ガスコンロを使う際は必ずそばで見守り、絶対に目を離さない
  • 可能であればIHクッキングヒーターへの変更が最も有効(介護保険の住宅改修で補助が出る場合あり)
  • 給湯器の設定温度をあらかじめ38〜40℃程度に下げておく(火傷防止)
  • ガスの元栓を使用時以外は閉めておく習慣をつける

看護師のここだけの話:カップ麺を作ろうとして熱湯で火傷を負う患者さんの手当ては何度もしてきました。「まさかそんなことは」と思う場面で事故は起きます。

対策③:転倒を防ぐ動線づくり——段差・照明・床材

認知機能が低下すると距離感がつかみにくくなり、歩き慣れた自宅でも思わぬ場所でつまずきます。転倒→骨折→寝たきりというリスクを防ぐために、以下を整えましょう。

  • よく通るルートにある不要な家具・床の物を片付ける
  • わずかな段差にスロープを設置する
  • トイレ・浴室・廊下に頑丈な手すりを設置する(介護保険の住宅改修で補助あり・ケアマネに相談)
  • 夜間トイレへの移動に備え人感センサー付きの足元灯を設置する
  • 滑りやすいフローリングには滑り止めワックスかコルクマットを使用する
  • 毛足の長い絨毯はすり足歩行の高齢者には危険なため撤去する

転倒対策の詳細はこちらもご覧ください。

対策④:見守り機器を「予防として」導入する

家族の目だけで24時間安全を確認し続けることは不可能です。便利な見守り機器を賢く活用しましょう。

  • センサーマット:ベッドから離れたら知らせてくれる
  • 見守りカメラ:スマホでリアルタイムに様子を確認できる
  • GPS端末:一人で外に出て迷子になるリスクに備える命綱

「まだ大丈夫」という段階から導入しておくことが、いざというときの対応を早めます。徘徊への具体的な対策はこちらをご覧ください。

対策⑤:生活リズムを整えて脳の混乱を減らす

危険行動を減らすためには、日々の生活リズムを一定に保つことが基本です。起床・食事・就寝の時間を毎日同じにすることで、体内時計が正常に働き認知症の方の心身は安定しやすくなります。

朝は太陽の光を浴び、夜は暗くして眠る——この当たり前のサイクルを取り戻すことが最高の予防策になります。

対策⑥:昼間の活動で夜間の不穏行動を減らす

日中に適度な活動を取り入れることで、夜間の危険行動や徘徊を大幅に減らすことができます。散歩・昔の趣味・一緒に洗濯物を畳むなど、内容はなんでも構いません。

心地よい疲労感は質の高い睡眠をもたらします。看護師のここだけの話:病棟でも日中によく笑った患者さんは、夜は驚くほど穏やかに眠ってくれます。

対策⑦:危険行動が起きた瞬間の対応——叱らず誘導する

どれだけ予防していても、予期せぬ行動は起きます。そのときの対応手順は以下の通りです。

  • まず深呼吸する:介護者が大声を出すと緊迫感が伝わり、本人の混乱がエスカレートします
  • 静かに近づく:慌てず騒がず、穏やかなトーンで声をかける
  • 「お茶を飲みましょうか」と別のことへ気をそらす:叱責より気分転換の方がはるかに有効です

看護師のここだけの話:点滴を抜こうとする方には怒るより「手が冷たいですね」と握る方が、何倍も効果的です。

対策⑧:介護者自身の心のゆとりを保つ

認知症の方の安全を守る上で、実は最も大切なのが介護するご家族の心のゆとりです。疲れ切っているときほど、少しの失敗に声を荒げてしまい、新たな危険行動を引き起こしてしまいます。

悪循環に陥る前に、デイサービスやショートステイを積極的に利用して自分の時間を作ることが、最大の安全対策になります。限界になる前に使える逃げ道はこちらをご覧ください。

専門機関への相談:どうしても収まらない場合の判断基準

8つの対策を試してもどうしても危険行動が収まらない場合は、専門機関へ早めに助けを求めましょう。かかりつけ医・精神科医・地域包括支援センターは、多くの事例を見てきた心強い味方です。医療の力で症状が緩和したり、プロのアドバイスで劇的に対応が楽になったりするケースも多くあります。

命に関わる事故が起きる前に助けを求めることは、決して恥ずかしいことではありません。

まとめ:今日から実践!アクションチェックリスト

認知症の危険行動は、本人がわざとやっているわけではありません。脳の機能低下によるサインです。8つの対策をまとめます。

  • 刃物・洗剤・薬など危険なものを今すぐ鍵のかかる場所か高い場所に片付ける
  • ガスコンロから目を離さない・IH化を検討する・給湯器温度を下げる
  • よく通るルートの障害物を片付け、手すり・足元灯を設置する
  • センサーマット・見守りカメラ・GPSを「まだ大丈夫」な段階から導入する
  • 起床・食事・就寝の時間を毎日同じにして生活リズムを整える
  • 日中の散歩・活動を取り入れて夜間の不穏行動を減らす
  • 危険行動が起きたら深呼吸→静かに近づく→気をそらして誘導する
  • 疲れ果てる前にデイサービス・ショートステイを予約して自分を休ませる

介護するあなた自身が心身の余裕を持つことが、本人にとっての最大の安全対策です。専門機関の力も借りながら、本人もご家族も安心して暮らせる環境を少しずつ作っていきましょう。

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