「治療がつらい」と言われたとき、看護師が家族に伝える判断軸5つ

著者について
  • 看護師7年目
  • 山間地域の退院支援に従事
  • 認知症サポーター研修受講済み
  • 祖母の介護を5年経験
汐です。
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導入文

「つらいって言ってるのに、やっぱり治療は続けなきゃいけないんでしょうか?」
あるご家族が、面会の後にふと口にした言葉です。

高齢者医療では、正解が一つではない選択が多く、悩みは深くなりがちです。看護師として現場にいると、「もっと早く、誰かに話せていたら」と思う瞬間に何度も出会います。

この記事では、「治療がつらい」と言われたときに、ご家族が立ち止まりながらも納得して前を向けるよう、看護師としてお伝えしたい5つの判断軸をご紹介します。


治療の目的を再確認する

目的は「病気を治すこと」だけではない

病名を告げられた瞬間、目指すべきは「治療=完治」と考えがちです。しかし高齢者医療では、完治よりも「生活の質」を重視する視点もあります。
痛みを和らげる、食事を取れるようにする、穏やかに過ごす時間を守る……こうした目的も、医療の大切な役割です。

「この治療は、何のために続けているのか?」と立ち返ることで、見えてくる選択肢があるかもしれません。


負担と効果のバランスを見る

「続けるだけでしんどい」治療に意味はあるか

現場では、治療の副作用で動けなくなったり、日常生活が大きく制限される方に出会います。
ある患者さんは、週2回の通院治療を続けていましたが、「病院に行くために生活しているみたい」と感じるようになったそうです。

治療の恩恵と負担を丁寧に見比べることは、ご本人とご家族の将来にとって、非常に重要です。医学的な“正しさ”と、生活の“心地よさ”が一致しない場面こそ、考え直すチャンスです。


意思を尊重する姿勢を持つ

治療に対する気持ちは言葉だけで量れない

「嫌とは言わないけど、うれしそうでもない」。
そんな表情の変化を、長年そばにいたご家族は敏感に感じ取ります。言葉で伝えられない方の意思確認は難しいですが、看護師やリハビリ職と協力して、“ご本人らしさ”を丁寧に探ることができます。

本人の希望が汲み取れないときには、「これまでの人生で何を大切にしてきたか」という視点も判断の手がかりになります。


家族自身の限界を見つめる

「もう無理かも」と思った自分を責めないで

介護の場では、支える側の我慢が前提になりがちです。でも、我慢しすぎて心が壊れてしまえば、誰のためにもなりません。

「ここまで支えたけれど、そろそろ限界」と感じたら、それは十分頑張った証です。
そのときは、医療チームに気持ちを共有してみてください。負担を軽くするための選択肢が、きっと見つかります。


迷ったら専門家に相談する

一人で答えを出そうとしない

「周囲に迷惑をかけたくないから自分で決めなきゃ」と思い詰めてしまう方が少なくありません。
でも、治療やケアの方針は、多職種で考えるからこそ広がりが出ます。

地域包括支援センターや病院の相談窓口、訪問看護師など、第三者に話すことで、新たな視点を得ることができます。


まとめ:選択に「正解」はなくても、「納得」はできる

この記事では、治療を続けるか迷ったときに立ち返る5つの軸をお伝えしました。

判断軸チェックリスト

  • □ 治療の目的は何か、明確になっているか?
  • □ 治療の効果と負担は見合っているか?
  • □ 本人の想いを丁寧に確認しているか?
  • □ 家族の心身の限界を把握しているか?
  • □ 専門職の意見を取り入れているか?

選んだ道が「完璧」である必要はありません。
大切なのは、後悔しないように、いま出来る対話と選択を重ねていくことです。
この記事が、その一助になれば嬉しいです。

もう治療をやめたい

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