はじめに:清潔にしているのに、なぜ?
「朝、ベッドがびしょ濡れで、皮膚も赤くなっていて…」
排泄後、しっかり清拭しているつもりなのに、皮膚トラブルが繰り返される。これは、私が関わったご家族の多くが抱える悩みです。
“どうしたらいいのかわからない”と落ち込む前に、ぜひ知ってほしい工夫があります。この記事では、下痢に悩む排泄介護の現場で、私が実際に役立ったと感じたケアの視点を5つ紹介します。
原因を正しく理解する
清拭しても肌トラブルが起こるのはなぜ?
一見清潔に見えても、下痢便は想像以上に肌へ負担をかけています。特に高齢者の皮膚は薄く敏感で、ちょっとした刺激でも荒れやすいのです。
刺激性の高い下痢便の影響
水分の多い便は皮膚に残りやすく、酸性度が高いため炎症の原因になります。長時間の付着は“びらん”や“ただれ”につながりやすいのです。
拭き方の摩擦と残便の見落とし
ゴシゴシと力を入れてしまう清拭は、実は逆効果。やさしい拭き取りと、便が皮膚に残っていないかの確認が重要です。
思わぬ原因に潜む「隠れた下痢」
「下痢と便秘が交互に…」という相談は少なくありません。実は、硬い便の裏で水っぽい便だけが漏れ出る“漏れ便”の可能性もあります。
硬い便にふたをされた“漏れ出し型”
腸内にたまった硬便のすき間から、液体状の便が流れ出すことがあります。これは便秘と下痢が同時に起きているサインです。
薬による副作用にも要注意
抗生物質や便秘薬が原因の下痢も見落とせません。最近薬を変えた、あるいは整腸剤を始めた場合は、主治医に相談しましょう。
現場で役立った5つの対策
肌を守る工夫を重ねる
皮膚を守るには、事後対応よりも“予防的なケア”が効果的です。私がよく勧めるのは、排泄前後のスキンケアと吸収パッドの活用です。
排泄前に保護クリームを
便が付着する前にクリームで皮膚バリアを張ることで、刺激から守れます。油分が多めのタイプを選ぶと、効果が持続しやすいです。
パッドの見直しで予防強化
吸収力だけでなく、サイズや肌ざわりもチェックしましょう。こすれる素材は炎症の原因になることもあります。
食事と水分のバランスを整える
「水分を控えたほうがいい?」と質問されることがありますが、実際は逆です。脱水が腸の動きを鈍らせ、便の異常を招くこともあるのです。
こまめな水分補給がカギ
一気飲みではなく、“ちょこちょこ飲み”が効果的です。経口補水液や味噌汁なども水分補給として役立ちます。
下痢を起こしにくい食材を選ぶ
繊維が多すぎる生野菜、冷たい飲み物、脂肪分の多いものは避け、にんじん・りんご・おかゆなどを中心にメニューを組み立てましょう。
失敗しないトイレ環境づくり
「間に合わなかった」「夜中に何度も起きる」…こうした悩みには、動線やタイミングを見直すだけで改善することがあります。
“誘導”が成功率を左右する
本人が言い出す前に誘導することで、排泄の失敗は大きく減らせます。排泄パターンの把握と、声かけのタイミングがポイントです。
夜間の“準備”が安心感に
ポータブルトイレや防水シーツの使用は、本人の不安を軽減し、介護者の負担も和らげてくれます。
まとめ
排泄ケアのトラブルは、清拭だけでは防ぎきれないことも多くあります。ですが、視点を少し変えれば、トラブルを減らす工夫はたくさん見つかります。
ポイントの振り返り:
- 下痢便は皮膚に強い刺激を与える
- 拭き方・清拭剤・保護クリームの見直しが重要
- “隠れた下痢”に注意し、便性状を観察する
- 食事・水分・排泄パターンの管理が鍵
- トイレ環境の見直しで失敗を減らす
📝チェックリスト:
☐ 清拭時に摩擦が起きていませんか?
☐ スキンケアを排泄前にもしていますか?
☐ 便の状態を観察できていますか?
☐ 食事と水分のバランスは取れていますか?
☐ 環境が本人の動きやすさに合っていますか?