あのとき逃げてよかった——限界介護の先に見えた光

著者について
  • 看護師7年目
  • 山間地域の退院支援に従事
  • 認知症サポーター研修受講済み
  • 祖母の介護を5年経験
汐です。

「すみません、私……やっぱり無理かもしれません」

静かなカンファレンス室で、涙をこらえながらそう言ったのは、義父を自宅で介護しているマユミさん。
数ヶ月前まで、バリバリ働いていた彼女は、退職後、義父の介護に全力を注いできました。
「私がしなきゃ誰がするの」
そんな覚悟の裏で、少しずつ、自分自身が削られていたのです。

介護を続ける中で、「もう限界」「逃げたい」と思ったことはありませんか?
けれど、そんな気持ちに気づいた瞬間、
「こんなふうに思ってしまう自分は最低だ」と、自分を責めてしまう人がとても多いのです。

この記事では、
「逃げたっていい」と思えるまでのプロセス
逃げた先で“光”を見出した人たちのリアルな声
そして、
あなたの“逃げたい”という気持ちを肯定する理由を、回復期病棟での看護師の視点からお伝えします。

もし今、検索欄に「介護 続けられない」「自分が限界」と打ち込んだあなたがここにいるなら——
このページをそっと閉じる前に、あと5分だけ読んでみてください。

“あのとき逃げてよかった”と、
あなたがいつか思える日がくることを願って。

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限界だったあの頃の気持ち

自分を責め続けていた

「逃げたら終わり」と思い込んでいた

誰かに助けを求めるよりも、「逃げたい」と思ってしまう——
それは心の奥底から発せられた、言葉にならないSOSです。
マユミさんも「自分が最後までやらなきゃ」と思い込んでいました。

でも、本当に大切なのは、“介護を続けるために必要な距離”を取ること。
逃げたことで、彼女はようやく「私は助けを求めてもよかった」と思えるようになりました。

誰かに相談するのが怖かった

マユミさんは、最初の一歩を踏み出すまで3週間悩んだそうです。
「話したら、崩れてしまいそうで……」
でも、実際に地域包括支援センターへ連絡した後、彼女の表情は明らかに変わりました。

“誰かに話す”という行動は、小さなようでいて大きな転機になります。
「限界かもしれない」と思ったとき、声に出すことが第一歩なのです。


それでも壊れてしまった

涙が出るのに理由がわからない

感情がこぼれた瞬間

「洗濯物を干しながら、なぜか泣けてきたんです」
理由のわからない涙は、心が発する無言のサインです。

私たちが現場でよく出会うのも、そういう“気づかないうちの限界”。
それは弱さではなく、「誰かに気づいてほしい」という心の誠実な反応です。

心が閉じていく感覚に気づいた日

日々の介護に追われ、自分の表情に違和感を持ったとき——
「笑ってないかも」と感じたら、それも限界のサインです。

心が“感じること”をやめてしまうと、日常の彩りがなくなっていきます。
それに気づいたときが、“立て直し”のスタートラインです。


逃げることの本当の意味

「逃げたい」はSOSだった

「助けて」と言えないかわりの感情だった

「逃げたい」と感じる自分を、どうか責めないでください。
それは、“助けて”と口に出せなかったあなたの心が選んだ、最善の表現だったかもしれません。

「もう無理」が言えたのは希望のサイン

マユミさんがケアマネに「無理です」と伝えた日から、状況が動き出しました。
その言葉は、「終わり」ではなく、「始まり」だったのです。


「逃げる=放棄」じゃなかった

一度離れてわかった自分の限界

ショートステイを利用して初めて、自分がどれだけ追い込まれていたかに気づいたマユミさん。
その時間は、心のリハビリでもありました。

「もう一度向き合いたい」と思えた瞬間

距離をとったからこそ、“やさしさ”が戻ってきた。
介護を続けるには、「ずっと寄り添い続ける」以外の方法もあると気づいたのです。


「逃げる選択肢」を知らなかった

ショートステイという味方の存在

“いざという時に頼れる場所がある”という安心感は、介護者の心を大きく支えてくれます。
その一歩が、次の一歩を支えてくれます。

「家族以外に頼る」ことへの罪悪感を手放した

支えるとは、“すべてを背負うこと”ではありません。
誰かと分かち合うことも、愛情の形です。


限界の先で見えたもの

心の余白が戻ってきた

たった1泊がくれた“自由”と“静けさ”

「何も予定のない時間」が、心を整えてくれた。
介護を続けるには、“空白”が必要なことを、彼女は体験で学びました。

「私のままでいい」と思えた5分間

朝の光を浴びながら、ふと呼吸を感じられた。
それは、“私”が戻ってきた証拠だったのです。


まわりの支えを受け取れた

「もっと早く頼ればよかった」

助けてもらうことに、遅すぎるということはありません
その一歩が、あなた自身の回復につながります。

プロに任せて初めて見えた景色

介護は、「愛情」だけで支えるものではありません。
「技術」と「連携」が、あなたの“やさしさ”を支えてくれます。


「あのとき逃げてよかった」と言える今

やさしさを長く続けるには距離が必要

やさしさには“余白”が必要です。
近づきすぎないことで、守れる気持ちがあります。

自分の人生も、ちゃんと生きていい

介護は、人生を止める理由にはなりません。
あなたの笑顔が、介護の質も支えていきます。


まとめ——やさしさを守るために

チェックリスト

  • □ 無表情な自分に気づいたことがある
  • □ 急に涙が出ることがある
  • □ 他人に頼ることが罪のように感じる
  • □ 介護以外の話をしなくなった
  • □ 「逃げたい」と思ってしまう自分を責めている

ひとつでも当てはまるなら、“逃げること”も選択肢に入れていい時期かもしれません。

ハイライトまとめ

  • 「逃げたい」は心のSOS。責めなくていい
  • ショートステイは“介護者の回復”のための制度
  • 自分の時間を持つことは、やさしさを続ける秘訣
  • 頼れる人に頼ることも、大切な介護力のひとつ
  • あなたの人生も、ちゃんと大切にしていい
逃げるイラスト

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