在宅酸素で呼吸が苦しい時の対応マニュアル7選

著者について
  • 看護師7年目
  • 山間地域の退院支援に従事
  • 認知症サポーター研修受講済み
  • 祖母の介護を5年経験
汐です。

「お父さん、息がしづらそう…でもどうしたらいいの?」

そんなふうに、酸素療法中のご家族の呼吸が乱れている場面に直面し、焦りと不安に包まれた経験はありませんか?

私は回復期病棟で働く看護師として、在宅酸素療法(HOT)を受ける多くの患者さんとご家族を支えてきました。中でも「酸素は流れているのに苦しそう」という場面は、想像以上に多く、かつ見逃されがちな危険信号でもあります。

この記事では、在宅酸素療法中に呼吸が苦しくなったときに、慌てずに確認すべき7つの行動を、現場での経験を交えながらわかりやすくご紹介します。


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状況を落ち着いて確認する

呼吸の観察から始めよう

まず、「何かおかしい」と感じたら、すぐに機器に飛びつくのではなく、呼吸そのものを観察することが大切です。

数値よりも“いつもと違う”に注目

酸素流量や機器の設定が正常でも、呼吸の速さや肩の動き、表情、唇や爪の色が普段と違うなら、それは異常のサインです。

かつて訪問時、酸素は適正に供給されていたにもかかわらず、便秘でお腹が張っていた方が呼吸苦を訴えていたケースがありました。原因を解消すると、酸素の調整なしに改善しました。

比べるべきは「いつもの呼吸」

ご本人の“ふだんの呼吸”を基準に、「今日は明らかに違うかどうか」を判断しましょう。その視点が、誤った判断を防ぎます。


酸素が届いているか確認する

次に、酸素がきちんと本人に届いているかをチェックします。

チューブとカニューラを見直す

チューブがねじれていたり、家具に挟まっていたりしませんか?カニューラが鼻から外れていたり、結露や分泌物で詰まっている場合もあります。

あるお宅では、酸素チューブがリクライニングチェアの脚に潰されており、酸素がほとんど流れていませんでした。

流量計の確認も忘れずに

機械が作動していても、「スタンバイ状態」になっていることもあります。泡が動いているか、設定が医師の指示通りか確認しましょう。

💡 ポイント:
壁や酸素機器に「①チューブ②流量③カニューラ」と書いたメモを貼っておくと、パニック時の手助けになります。


まずは落ち着くこと

本人が苦しそうにしていると、つい焦ってしまいます。しかし、介護者の不安はご本人に伝わり、症状を悪化させることもあるのです。

深呼吸して、一言添える

「大丈夫、確認するね」
そう声をかけるだけで、安心感を与えられます。

あるご家族は、「私が『どうしたの!?』と焦って叫んでいたら、余計に苦しそうに見えた」と話してくれました。まずは深呼吸を。落ち着きは“治療の一部”です。

対応手順を可視化する

「どうすればよかったんだろう…」を防ぐには、行動のチェックリストを目に見える場所に貼っておくことです。

例:

  • 呼吸の様子を見る
  • チューブと流量を確認
  • 異常時は酸素業者に連絡
  • 必要なら救急車を呼ぶ

4行のメモだけでも、安心感が全然違います。


次に取るべき対応

非常用酸素への切り替え

濃縮器の故障や停電時には、非常用ボンベや携帯酸素に切り替える必要があります。

非常用ボンベの使い方を確認

「予備はあるけど使ったことがない」
そんな声をよく聞きます。

  • バルブの開け方
  • 流量の調整方法
  • 接続方法
    これらをあらかじめ練習しておきましょう。

家族全員が扱えるように

酸素の管理が一人に偏っていると、いざという時に対応できないことも。家族みんなで10分だけ「酸素の避難訓練」をするのもおすすめです。


酸素業者に連絡する

異音、匂い、酸素が出ていない等、いつもと違うと感じたら業者に相談しましょう。

「まだ動いてるから大丈夫」は危険

機器は突然止まることもあります。早めの連絡が故障や事故を防ぎます。

通報時には、

  • 機種名
  • 症状や警告音の有無
  • 現在の流量設定
    を伝えると、対応がスムーズになります。

自己判断で流量は変えない

「ちょっと多めにした方が楽になるかも」は、逆効果になることも。特にCOPDの方には注意が必要です。


救急車を呼ぶべきタイミング

酸素が流れていても、呼吸状態が明らかに悪化しているなら、迷わず119番してください。

見逃してはいけない症状

  • 唇や爪が紫色
  • 意識がぼんやりしている
  • 酸素をつけていても改善しない
  • 呼吸数が異常に速い、あるいは遅い

救急搬送されたご家族が後から「こんなことで呼んでよかったのかな…」と不安そうに話すことがありますが、後悔するより、迷って呼んだ方が良いのです。

通報時の伝え方を決めておく

例:
「酸素療法中ですが、呼吸が苦しそうです。機器は作動していますが改善しません。」

こうしたフレーズをメモしておくだけで、通報時に慌てずにすみます。


次に備える準備

緊急対応のルーティン化

緊急時に判断力を失わないためには、普段からの備えが鍵です。

電話番号を目立つところに

酸素業者、かかりつけ医、病院、119、家族の連絡先を、目に入りやすい場所にまとめておきましょう。

定期的に“予行演習”を

「酸素が止まったら何をするか」など、家族で確認する時間を作りましょう。難しく考えず、月1回の夕食後などに実施するだけでも安心感が違います。


共有できる対応マニュアルを

主介護者だけが把握していても、いざというときに不在だと混乱します。

シンプルな印刷資料を作成

  • 機器の使い方
  • 故障時の連絡先
  • 異常時の判断ポイント

これらを一冊のファイルやバインダーにまとめ、「酸素対応マニュアル」として家族と共有しておくのがおすすめです。


まとめ:不安の種を、備えに変える

呼吸が苦しいとき、介護する側もパニックになります。
でも、落ち着いて観察し、確認し、連絡し、備えていれば、多くのトラブルは未然に防げます。


✅ 緊急時チェックリスト

  • 呼吸の様子と皮膚の色を観察
  • チューブ・流量・カニューラを確認
  • 非常用酸素の使用方法を家族で共有
  • 酸素業者に早めに連絡
  • 救急の判断基準を把握
  • 対応マニュアルを自宅に常備
  • 家族で定期的にシミュレーション

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酸素のイラスト

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