やめたいと思ったら読んで。経鼻栄養からの7つの道

著者について
  • 看護師7年目
  • 山間地域の退院支援に従事
  • 認知症サポーター研修受講済み
  • 祖母の介護を5年経験
汐です。
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「もう無理かもしれないんです。」

これは、はじめて耳にした言葉ではありません。介護者が、うつむきながら、絞り出すように言ったその一言。お父さんは数か月前から経鼻経管栄養を受けており、娘さんはすべての手順を丁寧に守っていました。でも、彼女の表情には疲労と迷いが滲んでいました。

この記事は、そうした「まだ決断できない」あなたに向けたものです。

夜中に「経管栄養 やめたい 方法」と検索しているあなた。何を知りたいのか、はっきりとは分からなくても、心のどこかで「このままでいいのか」と感じているあなたへ。

私は回復期病棟の看護師として、何人ものご家族がこの岐路に立つのを見てきました。この記事では、実際にご家族が選んだ7つの選択肢をお伝えします。医学書に載っている理論ではなく、日々の現場から生まれた、迷いと愛に満ちた「リアルな選択肢」です。


やめるのが「悪」じゃないと気づけたら

経鼻経管栄養を続けることが、現実的に難しくなる瞬間があります。自己嫌悪に陥る必要はありません。多くの方が、その壁にぶつかっています。

あるご家族はこう話してくれました。 「止めたら裏切りみたいで。でも続けてたら、私が壊れてしまう気がするんです。」

これは失敗ではなく、介護がいかに複雑な選択を求めるかを物語っています。

まずは、「なぜ続けるのがつらいのか」に目を向けることから始めましょう。

単なる身体的な疲れではない

介護の負担は、体力だけでなく「心のエネルギー」もすり減らします。医療の知識がないまま、医療者と同じ役割を日々担うことは、誰にとっても重圧です。

現場では、「疲れた」と言えない空気があります。でも、私は何度も見てきました。疲れているのは当然なのです。むしろ、「助けて」が言える人こそが強いのだと思います。

医療的な複雑さと感情の迷子

説明は受けた。でも分かった気がしない。そんな状態で日々の判断を続けるのは、大きなストレスです。熱が出れば「私のせい?」と自問してしまうのも無理はありません。

こうした「複雑さに飲まれる状態」が続くと、冷静な判断が難しくなってきます。

気づいたときは、まず「看護師に不安を共有する」のがおすすめです。どんなに小さなことでも、聞いていいんです。

「本人は望んでいないかもしれない」と感じたら

多くのご家族が、「本当はこうしてほしくなかったんじゃないか」と悩みます。

その問いは、介護者としての優しさの証です。もし本人が話せない状態でも、その人らしさを思い出してみてください。「美味しいものを食べるのが楽しみだった」「自然が好きだった」——そうした記憶が、決断の指針になります。


経管栄養に代わる、いくつかの道

もし「このまま続けるのは違う気がする」と思ったら、代わりにできることがあるかもしれません。

この章では、現場で実際に選ばれてきた3つの方向を紹介します。

経口摂取への移行を考える

一部の方は、少しずつ経口摂取を再開できることがあります。たとえ少量でも、口から味を感じられることは、驚くほど大きな意味を持ちます。

「味噌汁だけでも、また飲めたら…」と話された娘さんの言葉から始まった取り組みが、患者さんの笑顔を引き出したことを今も覚えています。

「嚥下機能の評価を依頼してみる」と安心につながります。

胃ろうや腸ろうへの切り替え

経鼻チューブに比べて、胃ろうや腸ろうは長期的な管理がしやすく、誤嚥のリスクも下がると言われています。

「毎回チューブの位置を気にするのがストレスで…」と感じている方は、医師に「胃ろうにすることで在宅ケアがどう変わるか」を尋ねてみてください。

「看取るケア」への切り替え

本人の病状や回復の見込みによっては、延命よりも「穏やかな時間を大切にするケア」に移行することも選択肢です。

それは「何もしない」ではなく、「痛みを和らげ、心穏やかに過ごせる環境を整える」積極的なケアです。


ご家族の選択を支えた3つの視点

何を選べばいいのか分からない——そんなときにこそ、大切にしたい問いがあります。

問い直すことで見えるもの

「やめるべきか?」ではなく、 「本人にとって何が大切か?」「自分は何を後悔しそうか?」と問いかけてみてください。

こうした問いは、決して答えを押し付けるものではありません。迷いに寄り添う、優しい道しるべです。

「やめる」は「手放すこと」ではなく「選び直すこと」

「やめる=見捨てる」と感じてしまうのは当然です。でも、本当に大切なのは「どんなケアがその人にふさわしいか」を選び直すことです。

ある選択を手放すことで、気持ちが楽になったご家族も多くいらっしゃいます。

「自分に許可を出せた瞬間」

「もう、やめてもいいのかもしれない」と口に出した瞬間。そこで初めて、本当の意味での「自分らしい介護」が始まることもあります。

誰かに「やめていいよ」と言ってもらうのを待つより、自分が自分に許可を出せたとき、介護は新しいかたちに変わります。


最後に伝えたい7つのこと

  • 疲れていることを、恥ずかしがらなくていい
  • 迷っているのは、愛している証
  • 「やめる」は「見捨てる」ではない
  • 本人の声を思い出すことがヒントになる
  • 看護師やケアマネに、もっと頼っていい
  • 選ぶことは、愛を形にすること
  • あなたは、もう十分に頑張っている

✅ あなたの気持ち整理チェックリスト

  • □ 経口摂取やPEGの可能性は確認した?
  • □ 続ける・やめる、それぞれのメリットとデメリットを整理できた?
  • □ 本人が何を望んでいたか、思い出せる?
  • □ 不安を誰かに話してみた?
  • □ 「看取るケア」も選択肢として考えてみた?
  • □ 自分の疲れや限界に気づけている?
  • □ 一人で抱え込んでいない?

もし一つでも当てはまったなら、この記事があなたの道しるべになれたら嬉しいです。

そして、もしこの記事が「私のことだ」と感じたなら、ぜひ誰かにシェアしてください。
あなたの経験が、誰かの「背中を押す言葉」になるかもしれません。

経管栄養

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