服薬ミスに潜む8つの理由。医師が気づかない“日常のクセ”とは?

著者について
  • 看護師7年目
  • 山間地域の退院支援に従事
  • 認知症サポーター研修受講済み
  • 祖母の介護を5年経験
汐です。

薬を忘れるのは「記憶」だけが原因じゃない

「もう飲んだかどうか、わからなくなるんです」
病棟での何気ないやりとりから、服薬ミスの原因に気づくことがあります。ある高齢の女性患者さんは、いつもと変わらない様子で朝の薬を手に取りながら、ふとつぶやきました。

ご家族は、「また忘れたの?」「さっき言ったでしょ」と不安と苛立ちを繰り返し、それでも答えが見つからずに悩んでいます。けれど、薬を忘れるのは本人の努力不足ではありません。

本記事では、現場で見えてきた「医師も見落としがちな服薬ミスの原因」を、日常に潜む“クセ”という切り口から解説します。この記事を通して、ご家族が抱えるモヤモヤの理由が明らかになり、今日からの関わり方に小さな変化が生まれることを願っています。


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日常生活に潜む「うっかり」の要因

時間の感覚が曖昧になっている

時間帯の認識がずれると、服薬のタイミングにも影響します。特に独居や昼夜逆転のある高齢者では、朝・昼・夜の区別が曖昧になりがちです。

生活リズムの乱れが原因に

日中の居眠り、夜間の覚醒が重なると、体内時計が乱れます。カーテンを開けて朝日を浴びる、朝食の時間を固定するなど、生活リズムを整える工夫が効果的です。

時計が見づらい環境

壁の時計が小さい、日めくりカレンダーが放置されたままなど、時間を確認する手段が視覚的に乏しいと混乱が起きやすくなります。数字が大きく見やすい時計を設置し、場所にも配慮しましょう。


「飲んだつもり」が記憶違いを生む

本人の中では「飲んだつもり」でも、実際には飲んでいないというケースはよくあります。

習慣が錯覚を引き起こす

毎朝決まった流れで服薬していると、行動と記憶が一致しないことがあります。服薬チェックリストや、カレンダーに印をつける習慣を取り入れることで、誤認を防げます。

確認の行動が定着していない

服薬後に「飲んだ」と意識的に確認する動作がなければ、次の時間に再び迷うことになります。「飲んだら声に出す」「カレンダーに印をつける」など、視覚や聴覚で記録に残る工夫が有効です。


薬の見分けがつきにくい

見た目の似た薬が複数あると、混乱が生じやすくなります。

似た形や色で混同する

白い錠剤ばかりでは、見た目で区別がつきにくいもの。色つきのシールを貼る、袋に用途を書いておくなど、視覚的な工夫を加えると混乱を減らせます。

処方変更が把握されていない

薬が変わっても、説明がないままでは本人は混乱してしまいます。処方が変更になった際は、家族も同席して説明を受けるのが理想です。


飲みにくさによる抵抗感

錠剤が飲みにくくなっている

嚥下力が低下していると、薬の服用が負担に感じられることがあります。

むせやすさがサインに

食事中にむせる、飲み込みに時間がかかるなどのサインがある場合は、嚥下機能の低下を疑います。医療機関での評価や、薬の形状変更を検討しましょう。

水分不足が影響している

服薬時に必要な水分が不足していると、喉につかえる原因になります。薬を飲む際は、100ml程度の水をしっかり用意し、無理なく飲める環境を整えましょう。


味やにおいへの敏感さ

高齢になると味覚や嗅覚が敏感になり、薬の味やにおいが不快に感じることがあります。

味覚の変化に配慮する

苦味や独特のにおいが原因で、薬そのものへの抵抗感を持つ方もいます。粉薬のカプセル化やゼリー剤などへの変更は、医師や薬剤師に相談できます。

服薬タイミングの見直し

食後すぐは満腹感や不快感で服薬が難しくなることがあります。薬によっては、食後30分以降でも問題ない場合があるため、確認のうえで調整するのも一つの方法です。


薬の量が多すぎる

薬が多いこと自体が、精神的・身体的な負担になることがあります。

服薬への意欲が下がる

一度に多くの薬を飲まなければならないと、「またこんなに…」と抵抗感が増します。必要に応じて服薬回数やタイミングを調整し、負担を減らす工夫が求められます。

回数が多くて煩雑になる

朝・昼・夕・就寝前など、1日4回以上の服薬があると、時間の管理が難しくなります。主治医と相談のうえ、1日1〜2回にまとめられないか検討しましょう。


支援のあり方が逆効果に

声かけに頼りすぎている

声かけだけに依存すると、ご本人の自律的な行動が損なわれることがあります。

伝わっていないことに気づけない

「声をかけたのに…」という家族の思いと、「聞こえていなかった」という本人のズレがすれ違いを生みます。声だけでなく、メモやジェスチャーを併用することも有効です。

支援が過剰になるリスク

日常のすべてをサポートすることで、本人が考える機会が減ってしまうことがあります。自分で確認し、選択する余地を残すことも、支援の一環です。


支援ツールが使いこなせていない

便利な道具も、本人に合っていなければかえって混乱を招きます。

生活動線に合っていない

服薬カレンダーやボックスが目立たない場所にあると、使われなくなります。普段よく通る場所や、習慣的に立ち寄る場所に設置しましょう。

アラームが負担になる場合も

音に敏感な方にとって、アラームはストレスになります。音量や音の種類を調整できるものを選び、本人の好みに合わせましょう。


医療者への相談ができていない

服薬に関する不安や疑問があっても、「聞きづらい」「迷惑をかけたくない」と遠慮してしまう方が少なくありません。

相談の仕方を工夫する

診察時に直接伝えるのが難しい場合は、メモやチェックリストを渡すとスムーズです。
服薬状況、困っていること、希望を簡潔にまとめて伝える工夫が役立ちます。

薬剤師の関与を強める

薬の内容や副作用に関しては、薬剤師のほうが詳しく説明してくれることもあります。地域によっては、訪問薬剤師によるサポートも可能です。


まとめ:服薬ミスの背景には“日常のクセ”がある

服薬ミスは「年だから仕方ない」と片づけられがちですが、その背後には生活リズム、習慣、支援のあり方など、さまざまな要因が隠れています。

ご家族の工夫ひとつで、服薬ミスの連鎖を断ち切ることができるかもしれません。焦らず、怒らず、小さな「違和感」に目を向けてみましょう。


服薬ミスを見直すチェックリスト

  • 時間や曜日の感覚がずれていないか
  • 薬を見分けにくくなっていないか
  • 飲み込みにくさや嫌悪感はないか
  • 支援の声かけが一方的になっていないか
  • 支援ツールが本人に合っているか
  • 医師や薬剤師との相談ができているか

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