「薬、ちょっとずつ減らしていきましょうか」
その言葉に、ご家族の表情が一瞬固まりました。
「でも、減らして何かあったら…私、きっと後悔します」
回復期の病棟では、薬の調整を検討する機会が多くあります。
そしてそのたびに、患者さん本人だけでなく、ご家族の不安とも向き合うことになります。
この記事では、薬を減らすことに不安を抱えているご家族へ向けて、
現場で実際に見てきた事例とともに、減薬にまつわる5つの本質的な視点をお伝えします。
読後には、医療者と同じ目線で「どう考えれば安心できるか」が見えてくるはずです。
なぜ薬を減らすのが怖いのか
不安を抱くのは自然なこと
「減らしても大丈夫?」という不安は、ごく自然な感情です。
薬は“守ってくれるもの”というイメージが強く、やめることに抵抗を感じる方がほとんど。
特に高齢の方は、薬が生活習慣の一部になっているケースも多くあります。
ですが、その不安こそが、“慎重に考える力”でもあります。
毎日飲むことの安心感
薬を飲むこと自体が、日々のルーティンとして定着していると、それを手放すことは「調子を崩すのでは」という恐怖に変わります。
実際、薬を減らして調子がよくなるケースもありますが、怖さが先に立ち、行動できない方も多いのが実情です。
「もしもの不安」は悪ではない
「症状が戻ったらどうしよう」と考えるのは当然です。
その不安を否定する必要はありません。
むしろ、その感情をもとに医療者と話すことで、より納得のいく選択ができるようになります。
減薬を始める前に知るべきこと
すべての薬が「今も必要」とは限らない
高齢者では、過去の処方がそのまま継続され、結果として薬が増えていることがあります。
厚労省も「多剤併用」による副作用や転倒リスクを問題視しており、**減薬はむしろ“必要な見直し”**でもあるのです。
医師も見直しを想定している
薬の処方は、あくまで一時的な治療としての位置づけが多く、永続的なものではありません。
特に状態が安定してきた場合には、減薬のタイミングを見計らっている医師も多くいます。
重複や副作用のリスク
同じ作用をもつ薬が複数処方されていたり、不要な継続が副作用を招いていたりすることも。
特にふらつきや眠気は、薬の影響であることが少なくありません。
減薬は「やめること」ではない
「減薬」という言葉が与えるイメージは、“急にやめる”ことかもしれません。
しかし実際は、医師の管理のもと、少しずつ調整する過程のことです。
少しずつ進める調整
多くの現場では、1種類の薬を減らし、様子を見て、またひとつ見直す…という慎重な手順が取られます。
これにより、安全性を確保しながら減薬が可能になります。
医師・薬剤師と協力する理由
不安があるときほど、医療者との連携が重要です。
「先生に失礼かも」と遠慮せずに、「薬のことも少し気になっていて…」と話してみることが、安心の第一歩になります。
回復期で見えたリアルな変化
減らしてよかったという実例
実際、薬を減らしたことで、日中の眠気が減り、リハビリへの集中力が高まった患者さんもいます。
その方は食欲も戻り、以前より表情が豊かになったと家族が喜んでいました。
歩行の安定や会話の増加
多剤服用を見直したことでふらつきが改善し、転倒リスクも軽減。
本人から「頭がすっきりした」との声もありました。
減薬がうまくいかなかった例もある
減薬には成功例だけでなく、慎重な対応が必要なケースも存在します。
自己判断のリスク
家族が独断で薬をやめた結果、症状が悪化し、再入院が必要になった方もいます。
“気になったらすぐ相談”が、最も安全な選択です。
減らせないケースもある
症状によっては、減薬が逆効果になることも。
「減らさないこと」も正解のひとつであり、理解することで安心につながります。
不安を安心に変えるためにできること
医療者との“共有”が第一歩
「薬が多いかも」「最近様子が違う」と思ったら、率直に伝えてみましょう。
相談というより、“情報の共有”として話すことで、医療者も受け入れやすくなります。
メモや記録を活用する
具体的な体調変化を記録しておくと、医師への相談がスムーズになります。
食後の眠気や、歩行のふらつきなどをメモするだけでも、重要な判断材料になります。
声かけを変えるだけでも変化が
「ちゃんと飲んだ?」ではなく「飲んでからどう?」と聞くことで、対話の質が変わります。
観察と気づきを日常的に共有していくことが、減薬の不安を和らげます。
減薬の不安を和らげる5つの視点【まとめ】
- 不安は、立ち止まる力。慎重に向き合うサイン。
- 薬は“ずっと必要”とは限らない。状態で見直す視点が大切。
- 減薬=中止ではない。“安全な調整”という考え方を。
- 成功・失敗を問わず、家族の声が鍵になる。
- メモと対話で、不安を“見える化”しよう。
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