「こんなに頑張ってるのに、どうしてつらいんでしょうか」
そう呟いたのは、義父の介護のために仕事を辞めたマユミさんでした。
当初は「やるべきことがあるのはありがたい」と話していた彼女。
けれど数か月後、顔から表情が消えていったのを、私は見逃せませんでした。
介護を続ける中で、あなたのやさしさがすり減っていく感覚——
そのままにしていませんか?
本記事では、「やさしさが壊れる前に」知ってほしい6つの視点をお届けします。
これは、あなたの中にある声にならない「助けて」を、そっとすくい上げるための記事です。
やさしさが壊れるとき
介護の現場では、“いい人”ほど壊れるのが早いと感じます。
その理由は、やさしさを「義務」として背負ってしまうからです。
ここでは、やさしさが壊れやすい瞬間に潜む3つの背景を見ていきます。
自分の気持ちを後回しにしている
「やらなきゃいけない」が口ぐせになっていませんか?
介護は日々の積み重ねです。
やることが多くなるほど、「まず家族を優先」が習慣になります。
でも、“自分の声”が聞こえなくなるほど忙しい日常は、やさしさをすり減らしていきます。
心に余白がなければ、感情は押し込まれ、身体は無理をし続ける。
まずは、1日の中に「自分の気持ちを感じる」時間をつくってみませんか。
「いい人」であろうとしすぎている
感謝されないことで感じる虚しさは、あなただけではありません。
介護の中で「嫌な顔をしない」「我慢強くある」ことを自分に課しすぎると、
“やさしさ”は演技に変わり、心はどこか遠くへ行ってしまいます。
「こんなに頑張ってるのに、ありがとうの一言もない」——
その思いを否定しないでください。
それは、やさしさが疲れてきた合図です。
やさしさの裏にある“孤独感”
誰にも弱音を吐けず、ふとした瞬間に涙が出る——
そんな経験、ありませんか?
介護中は、誰にも迷惑をかけたくないと思うあまり、
「大丈夫です」と自分を装い続けてしまうことがあります。
でも、本当にしんどくなったとき、
「泣けたこと」自体が、自分のSOSに気づく大切なタイミングになります。
義務感が心をすり減らす仕組み
介護を“当然の責任”だと捉えすぎると、
知らないうちに心が削られ、やさしさが重たく感じられるようになります。
「してあげなきゃ」が日常になっている
「私がやらなきゃ」その言葉は、気づかないうちにあなたを縛っていきます。
もちろん、家族を大切にしたい気持ちは自然なこと。
でもそれが「義務感」に変わってしまったとき、
自分のために生きる時間がすっかりなくなってしまいます。
本当にそれは“あなたじゃなきゃいけないこと”でしょうか?
一度、立ち止まって問い直してみてください。
キャリアや夢を諦めたことへの葛藤
「この選択は正しかったのか」——
そんな問いを持つことは、とても人間らしいことです。
介護のためにキャリアや夢を諦めた人は、その決断に誇りを持ちつつも、
「何かを失った感覚」に蓋をしてしまいがちです。
でも、心のどこかで疼いているなら、それはまだ「自分の人生を大切にしたい」という証拠です。
「逃げたい」気持ちを持つことへの罪悪感
「逃げる=悪いこと」ではありません。
むしろ、“少し距離を取ること”は、壊れないための第一歩です。
ショートステイやヘルパー、デイサービスなどの制度は、
介護者が“継続できるため”に存在しています。
“休む”は、やめることではありません。
守るための、戦略です。
やさしさを守る6つの方法
介護を長く続けていくには、「がんばる」以外の技術が必要です。
この章では、今日からできるセルフケアのヒントを6つお届けします。
「自分を守る」時間をつくる
まずは5分だけ、“自分の呼吸”に意識を向けてみてください。
深呼吸をする、目を閉じる、湯気を見る——
それだけでも、あなたの心は落ち着きを取り戻します。
マインドフルネスは、ストレス軽減の科学的裏付けのある方法です(Kabatzinn, 1994)。
「一時的な解放」を肯定する
ショートステイや外部サービスは、
「最終手段」ではなく「定期的な休息」の手段です。
まずは1泊から試してみる。
ケアマネや地域包括支援センターに「相談だけ」してみる。
“離れる勇気”が、あなたのやさしさを守ります。
「相談できる人」を意識しておく
あなたの気持ちをそのまま受け止めてくれる人が、ひとりいればいいのです。
SNSでつながる元同僚、地域の支援センターの担当者、ケアマネ——
専門知識がなくても、「ただ聞いてくれる人」が心の避難所になります。
まとめ:壊れないやさしさの持ち方とは
あなたのやさしさは、壊れてはいけないものです。
そのためには、次のことを忘れないでください。
✅ チェックリスト
- 「やらなきゃ」が習慣化している
- 感謝されないことにモヤモヤしている
- 泣くタイミングが分からない
- 自分の夢やキャリアを諦めた気持ちが残っている
- たまに“逃げたい”と思う
- 周囲に相談できていない
- 休むことに罪悪感がある
ひとつでも当てはまるなら、それは心からのサインです。
どうか、自分のやさしさを壊してしまう前に、小さなひと呼吸を。
あなたの人生も、今ここで続いているのですから。