もう頑張らないで。食事介助がラクになった6つの視点

著者について
  • 看護師7年目
  • 山間地域の退院支援に従事
  • 認知症サポーター研修受講済み
  • 祖母の介護を5年経験
汐です。
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「食事がしんどい」その背景に目を向ける

「今日も残しちゃったね…」
そんなご家族のため息を、私は病棟で何度も聞いてきました。
介護する方にとって、食事の時間は「栄養を摂らせなきゃ」という責任と、「また食べてくれなかった…」という挫折感が交錯する時間です。

この記事では、看護師として高齢者とそのご家族に寄り添ってきた経験をもとに、介護者の心と身体の負担を減らす視点を6つに分けてご紹介します。
「介護は頑張るもの」という価値観に縛られず、長く続けられる関係性を築くヒントにしていただけたら嬉しいです。


しんどいのは、本人も介護者も同じ

高齢者が「食べたくない」と言う理由

加齢により、咀嚼力や嚥下力が低下することはよく知られています。
実際に、日本老年医学会では、食欲不振や摂食困難は老年期における低栄養の主要因であると指摘されています。
さらに、認知機能の低下や、食べる動作そのものへの不安も重なり、「食べること」自体が負担になる場合があります。

「お腹は空いてない」「なんとなく疲れる」——そんな小さなサインにも耳を傾けることが、第一歩です。

介護者が無意識に抱えるプレッシャー

「ちゃんと食べさせなきゃ」「残したら栄養が足りないかも」
こうした思いが積み重なると、介護者の精神的負担は大きくなります。
厚労省の報告によると、**在宅介護者のうち4割以上が“精神的ストレスを感じている”**というデータもあります(令和4年・国民生活基礎調査)。

食事は毎日のことだからこそ、“完璧じゃなくていい”という意識の切り替えが、長期的にはとても大切です。


今日からできる6つの視点転換

① 食べたい気持ちを引き出す

見た目、香り、選ぶ楽しさ。
一皿を完食してもらうことではなく、「何か一口でも食べたい」と思ってもらえることが大事です。

たとえば、「今日はどれが食べたい?」と小鉢で複数の料理を出すだけでも、「選べる」ことで意欲が高まります。
嗅覚や視覚からの刺激も大切にしながら、“楽しさ”を感じられる食卓づくりを意識してみましょう。

② 食べやすい形と道具にする

硬すぎる、すべる、熱い、重い……そういった些細なことが、「もういいや」と思わせてしまいます。
嚥下が不安なら、とろみをつけたり、ムース状にするだけでも負担が軽減します。
市販の介護食やミキサー調理なども併用しつつ、使いやすいカトラリーや器の導入もおすすめです。

また、100円ショップでも介護向け食器は増えています。負担を感じない環境作りを、手軽なところから始めてみてください。

③ 食事の時間にとらわれすぎない

「朝昼晩、時間どおりに3食食べさせなきゃ」と思っていませんか?
高齢者は体調やリズムが日によって大きく変わります。
ときにはおやつを活用したり、少量を何回かに分けて摂る「分食」に切り替える方が、負担が少なく摂取量も増えることがあります。

日中の活動量や眠気のタイミングなどを観察しながら、“その人に合った時間”での食事提供を試してみましょう。

④ “やらなきゃ”の思い込みを手放す

「食べさせなきゃ」という思いは、善意である一方で、介護者自身の心身を追い詰める要因にもなります。

「一口食べられたらOK」「今日は気が進まない日なんだな」と、余白のある視点を持つことは、介護を続けるうえでの鍵です。
気負いすぎない関係性が、かえって本人の食欲を引き出すこともあるのです。

⑤ サービスを“手抜き”ではなく“選択肢”ととらえる

宅配食や介護食の導入に抵抗を感じる方も多いですが、栄養管理されたメニューを活用することは、安全で継続しやすい選択です。

また、デイサービスでは、食事が“イベント”のような楽しみにもなります。
「いつもの環境じゃないからこそ食べられる」こともあります。

「自分で全部やる」から「頼れる部分は任せる」へ、視点を切り替えることも重要です。

⑥ 専門家とつながることを恐れない

「この食事で大丈夫?」という不安は、一人で抱えずに相談して良いのです。
地域包括支援センターでは、管理栄養士・訪問看護師・ケアマネージャーと連携した相談ができます。

栄養補助食品の選び方や、配慮すべき病状との関係も、プロの視点が入ることで安心感が生まれます。
“話すこと”自体が、介護者のリフレッシュにもつながります。


まとめ|ラクになることは、悪いことじゃない

「もっと頑張らなきゃ」と思い続けて疲れ切っていませんか?
介護における“正解”はひとつではありません。


✅ 食事介助がラクになるチェックリスト

  • □ 食べたい気持ちを引き出す工夫をしている
  • □ 食器や形状を工夫している
  • □ 食事の時間に柔軟性をもっている
  • □ 食べなかった日を責めないようにしている
  • □ 配食やサービスを取り入れている
  • □ 専門家に相談している

あなたの“工夫”は、誰かにとって大きな希望になります。
この記事が少しでも役立ったら、SNSでのシェアやコメントで、あなたの経験をぜひ伝えてください。
「しんどい」を抱えるすべての人が、少しでも軽くなれますように。

食べることは健康の第一歩

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